KEYWORD 7 レジリエンス・トレーニング
日本でも2013年頃から関心が高まっている「レジリエンス」。
「精神的回復力」「抵抗力」などと訳される心理学用語であり、ビジネスパーソンのメンタルヘルスケアが重要視される昨今、注目すべきキーワードの1つである。
外資系企業を中心に、すでに「レジリエンス・トレーニング」を企業内研修に導入している例もある。そこで、日本でレジリエンス・トレーニングを広める活動を行っている久世浩司氏に、レジリエンスとはどんな概念か、また、どのようにしたら高めることができるのかを聞いた。
「レジリエンス」とは
「レジリエンス」の定義は人や団体によってさまざまだが、アメリカ心理学会は「逆境や困難、強いストレスに直面した時に適応する精神力と心理的プロセス」と説明している。
では“レジリエンスのある人”とは具体的にどんな人を指すのか。私は以下の3つの力を持っている人のことだと捉えている。
<回復力>
ストレスなどによって一時的に落ち込んでも、そこからすぐに立ち直れる力である。この力がなければ、いつまでもくよくよ悩み続け、生産性を低下させてしまう。
<緩衝力>
いわば精神の“弾力性”だ。弾力性を持つ人の心はテニスボールのように、外からのストレスを跳ね返すことができる。しかし弾力性がないと、卵の殻のようにパキッと割れ、心が折れてしまう。
<適応力>
次は「適応力」。例えば企業人の場合、リストラ、組織改革、異動、昇格といった変化は、どれも基本的にはストレスとなるが、それらに上手に適応していける力のことだ。
ここで明確にしておきたいのは、こうした力は本来誰もが持っており、「自分は非常に打たれ弱い」と考えている人でも、訓練によって高めたり引き出すことが可能であるということだ。
ただし、レジリエンス・トレーニングが機能するのは、ストレスを抱えてはいるがメンタルヘルス不調にまでは至っていない層。予防には効果を発揮するが、不調に陥った場合は臨床心理士などの専門家を頼るべきだ。
必要とされる3つの理由
そもそもレジリエンス研究は、うつ病の若年化が深刻になりつつあった30 年ほど前に始まった。“思春期以降にうつ病にかかると、成人以降での再発リスクが一気に高まる”というデータに注目した研究者たちによって、将来うつ病にかかりにくくするために、子どもたちへのレジリエンス教育が進められた。その後、企業でのメンタルヘルスの問題が顕著になり、レジリエンス・トレーニングの企業への導入が始まった。具体的な企業名を挙げれば、ロイヤル・ダッチ・シェルやゴールドマン・サックスなどである。