KEYWORD 4 「内なるグローバル化」と外国籍人材の獲得・活躍
労働力の確保と国際競争力向上のため、日本企業の人事にとっては、外国籍人材の獲得や活用、育成も目下のテーマとなってきている。
そうした中、海外の名だたる大学からのインターンなど、外国籍社員を積極的に受け入れているのが三井化学だ。
その取り組みの具体的な内容や、これまでの苦労や課題について、人事部グローバル人材開発グループ グループリーダーの吉田存方 氏に伺った。
国籍で採用基準の差は設けず
当社では、2005 年から外国籍社員の定期採用を行っている。これまでに中国、台湾、韓国などの漢字圏の出身者を中心に、累計で50 名ほどを採用した。
対象者は、主に日本の大学への留学生。新卒採用の中、試験も採用基準も日本人の学生と同様の方法・基準で採用している。求める資質も日本人と変わらず、「幅広い視野を持っていること」「自分で考え、周囲を巻き込んで行動ができること」などだが、外国人ならではの「新しい発想をもたらしてくれること」にも期待している。
キャリア形成も基本的には日本人と同じだ。事務系、技術系など緩やかな職種単位で採用するが、その人の能力や特性を見て配属や異動を考えるため、海外営業が志望であってもファーストキャリアが工場のコーポレートスタッフ、ということもある。
一方、外国人であることのアドバンテージを活かすため、入社後5年を目処にグローバルな業務を担当させるようにしている。ただし、この「グローバルな業務」とは海外勤務に限らない。海外の顧客との窓口業務や、海外の関連会社、関連部門との連絡など、国内にいながら海外とコミュニケーションをとる業務も含まれている。
インターンや奨学金制度も
留学生の採用に加え、2007年からはハイレベルな人材の確保を目的に、海外の大学との間でインターンシップも実施している。
現在、インターンシップを受け入れている大学は、中国の清華大学、浙江大学、大連理工大学、インドのインド工科大学、シンガポールのシンガポール国立大学と南洋理工大学の計6大学。
インターンシップの期間は4 ~ 10 週で、毎年十数名が、日本国内の工場や研究所、事業部で実務を経験している。
インターンシップにかかる渡航費や滞在費、日当などは当社が負担するため、費用はかなりの額になるが、これまでに8名のインターンシップ経験者が入社したことを考えると、優秀なグローバル人材の確保のために必要な投資だと言える。
この他、シンガポール経済開発庁と協力し、相互人材育成プログラムも行っている。
これは、東京工業大学国際大学院のプログラムに派遣する学生の学費と奨学金を当社が支給する代わりに、卒業後は最低3 年間、当社のグループ内で働くことを義務づけるもので、インターンシップの参加者がこのスカラシッププログラムに応募するケースも多い。