KEYWORD 3 女性活躍推進
アベノミクスの成長戦略の中核として位置づけられ、メディアでも毎日のように話題となっている「女性活躍の推進」。
これを受け入れ、現場で推進していく立場にある企業に対して、国はどのような支援を行っているのだろうか。
本稿では、2014年10月に行われた「第66回 全国能率大会 経営・技術大会」での講演内容から、経済産業省の取り組みと、そこから見えてきた企業の女性活躍推進に関する望ましい方向性を中心に紹介する。
成長戦略の中核に位置づけ
安倍政権が掲げる「アベノミクス」の三本の矢の1つが、企業活動や貿易の規制緩和を中心とした「成長戦略」である。2013 年4月、安倍晋三首相は「成長戦略スピーチ」の中で、その中核として「女性の活躍」を取り上げた。
具体的には、「2020 年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」という目標を掲げ、それに合わせて女性登用に向けた目標設定と自主行動計画の策定や、有価証券報告書への女性活躍の情報開示を各企業に求める他、国・自治体・企業の連携による新たな法的枠組みの構築といった、具体的な施策の運用に踏み切った。
こうした中、経済産業省(以下経産省)では、女性活躍推進に向けたさまざまな取り組みを行っている。今回は、それらの背景と具体的な施策について紹介したい。
女性活躍推進4つの背景
そもそも、なぜこれほどまでに女性の活躍を推進していく必要があるのか。
最大の理由は、これからの企業経営において、女性を含め多様な人材を活用する「ダイバーシティ・マネジメント」がより重要とされるからである。その背景に、次の4つが挙げられる。
1つめは、「多様なニーズへの対応」だ。中でも女性は、家計支出における意思決定のうち、6~7割は女性が行うという調査もあるほど、世界的に見て市場のメインプレーヤーとされる。よって「女性のニーズ」に応えることは不可欠であり、企業がそのための戦略を立てるうえで女性の存在は大きいからである。
2つめは、「資金調達」である。欧州を中心に、SRI(社会的責任投資。投資先選定の際にCSR活動を重視すること)のシェアが拡大しており、ダイバーシティの推進も指標の1つとされている。長期的かつ安定的な資金調達のためにも、女性の活躍は一役買っているということだ。
3つめは、「適応能力の向上」が挙げられる。イギリスのリーズ大学の調査によると、「役員に女性が1人以上いる企業は、経営破綻の確率を20% 減らすことができる」という報告もあり、多様な人材を擁する企業は、ガバナンス管理や変化に対する対応力に優れ、仮にリーマンショックのような厳しい環境下に置かれた場合でも業績の落ち込みが少なく、かつリカバリーが早いとされている。
そして4つめに挙げられるのが、「優秀な人材の確保」だ。能力は高いが制約のある人材も能力発揮できる環境を整えることにより活躍を後押しし、さらにその成果を社会に向けて発信することで、より広い母集団から人材が集まるようになり、優秀な人材確保につながる。
なお「女性が活躍している企業は業績がよい」という調査もある(図1)。