企業事例1 研修とOJTの繰り返しで 組織の要=課長職を鍛える
キヤノンシステムアンドサポートでは、昨年から既任課長職に対する教育プログラムをスタートさせた。同プログラムは、研修とOJT(現場での実務)を繰り返しながら、課長職として課の目標を設定し、目標を必達するための力、すなわち攻める力を身につけていくというもの。心構えや姿勢といった「守り」の教育になりがちな管理職教育を、「攻め」の教育へとシフトさせた同社の教育を紹介する。
部下にも上司にも影響力がある課長職
「我々の仕事は、顧客を訪問し、製品・サービスを直接提供することを基軸とするビジネスです。競合他社との競争は、熾烈さを増す傾向にあります。そうした現場を舞台にビジネスを展開している我々のような業種では、リーダー、特に課長のマネジメント能力が、課の売り上げやメンバーのモチベーションに大きな影響を与えると考えています」自社における課長の役割の重要性をそう語るのが、総務人事本部人材育成部部長、倉持嘉秀氏だ。同社はキヤノングループの販売関連会社として1980年に設立。以来、キヤノンのDNAを受け継ぎながら、人づくりに力を入れてきた。今、最も力を入れているのが、平均年齢46歳(課長兼務の部長も含む)の既任の課長職の育成だ。あえて課長職育成にテコ入れすることを決めたのはなぜか。その背景について、倉持氏はこう話す。「当社にとって課長職は組織の要。課長次第で課員のモチベーションが決まるといっても過言ではありません。たとえば、課員は全く同じメンバーなのに、課長が変わったとたん、業績がアップすることもある。それだけ課長職というものが、現場において大きな存在だということは、以前から注目していました」課長の顔色を課員がうかがっているような組織では、コミュニケーションが滞り、あらゆる面で弊害が出てくる。課長が部下に与える影響は、計り知れないものがあるのだ。さらに課長には、“幹部候補生”という一面もある。ゆくゆくは、部長、そして役員として会社を牽引するためには、「こういうチーム・組織をつくりあげたい」というビジョンを描き、それを実行していく力が必要だ。「部下に対しては、『後始末は俺がやるから臆せずにどんどんやれ』と懐深く接し、自らは率先垂範で行動する。そうした課長の姿を見て、上司は自分の襟を正す……。行動や言動で、上司・部下の両方に対して大きな影響を与えることができるのが課長というポジション。それが、『課長=組織の要』たるゆえんなのです」(倉持氏、以下同)