Opinion 2 経験の捉え直しと言語化による 管理職の“学び”
組織を牽引する既任管理職が学び続けることは、企業の成長に直結する。しかし、管理職ともなると忙しく、研修の機会も減る。こうした中で、どのように学ぶことができるのか。管理職の学びを研究してきた近畿大学経営学部の谷口智彦准教授は、管理職なら誰しもが持つ経験を意識的に捉え、言語化する工夫の中で、学びの質を高めることができるという。管理職が学び続けることの重要性と、その方法について聞いた。
「効率」と「変化」企業での2通りの学び
管理職、特に既任管理職となると、会社から学ぶ機会を提供されることは少なくなりがちだ。さらに、ピラミッド型の組織形態では、部長職や課長職から経営層になるのはほんの一握りの人材だろう。若手の時と違って、管理職ともなれば自分がこの先どう進むのかもある程度見えている。こうした状況下でも学習し、成長し続ける意欲を保つことは容易ではない。それでも私は、管理職になっても、学び、成長することはできると考えている。企業組織における“学び”には2通りある。1つは、業務を効率化するための学び。企業の目的は、合理的に業務を進め利益を上げることにある。したがって従業員は、管理職も一般職も全員が知識やスキルを増やし、自分の業務を効率化する方法を学ばなくてはならない。この効率化するための学びは、仕事をしながら自然と習得している。上司や同僚の仕事ぶりを見て真似ることや、経験を重ねることによって、誰でも次第に効率的な仕事パターンを身につけていくものだろう。ところが、このようにして効率化する学びだけを続けていると、ある時必ず成長が止まってしまう。そこで管理職に求められるのが、「(パターンを)変えるための学び」である。たとえば人事異動を命じられた時や新たな業務が付与された時などの転換期が良いきっかけになる。これまで自分が学んできたやり方が通用しない事態に遭遇し、習慣化したパターンを変えなくてはいけなくなる時が必ずやってくるのだ。豊富な経験を重ねた管理職は、「効率化のための学び」のベテラン。ただし、それに慣れてしまい、かえって「変えるための学び」が妨げられているのではないだろうか。
なぜ管理職は変わることを学ぶべきか
現在は、新しい市場、新しい戦略、新しい視点と、常に変化が求められている時代だといえる。こうした状況の中、管理職も従来と同じやり方で成長していけるのであれば問題ないが、それは望めない。管理職自らが変化し学び続けない限り、自分にも会社にも将来的なパフォーマンス向上は期待できない。