ID designer Yoshikoが行く 第55回 悲しみの中、颯爽と現れた 1級葬祭ディレクターとは
突然の喪主に慌てる……
「初めての喪主」をすることになった。当然ながら、突然振られた役割で、なおかつ、待ったなしのスケジュールである。ひと昔前なら、親類縁者とご近所さんが葬儀一切を取り仕切り、家族はハンカチを握りしめてシミジミ涙ぐむことができたのかもしれない。しかし、少子高齢化を体現している我が家の場合、数少ない家族・親族はほとんど海外在住で、心優しきご近所さんの多くは故人より年配の方ばかり。見渡したところ、この緊急事態にフットワーク軽く走り回れる人材は私ひとり、である。しかも困ったことにこの人材、なんの前提知識も覚悟もない。看取ってくれた看護師さんも、ほっておいたらいつまでもボーッと突っ立っているかもしれないと危ぶんだのであろう。遠慮がちに、「これからどうされますか」と耳元でささやく。「え?」と焦点の定まらない視線を投げると、「おウチに帰られますか、それともまっすぐ斎場に?」おおっと、ウルウルしている場合じゃない。まずはこの二者択一問題に即答しなくては!こうして誠に心もとない喪主の格闘が始まったのである。