巻頭インタビュー 私の人材教育論 創造開発力もグローバル人材も 源泉は「心の才能」
かつて困難とされていた機械の直線運動部の「ころがり化」。それを実現したのが、工作機械や半導体製造装置等々に使われているTHKの「LMガイド」だ。これは、回転運動部のころがり化を実現した回転ベアリング以来の技術革新だった。それから40年。グローバル時代を生き抜くにあたり新たな技術革新、人材づくりに迫られる同社。さらなる成長のヒントについて、寺町社長に伺った。
クリエイティビティは「場」を与えて発掘する
――メカトロニクス産業に不可欠な部品、「LMガイド」を世界に先駆けて開発した貴社の最大の強みは「創造開発」だと伺っています。強みを伸ばしていくために必要なこととはどんなことでしょうか。
寺町
創造開発型企業であるためには、絶え間ない努力が不可欠です。当社は高度経済成長期に“機械の直線運動部のころがり化”という画期的な技術を生み出すことに成功し、1972年にその技術を世界で初めて「LMガイド」として製品化しています。さらに1996年、従来製品よりも飛躍的に性能を向上させた「ボールリテーナ入りLMガイド」も開発しました。当社は、「世にない新しいものを提案し、世に新しい風を吹き込み、豊かな社会作りに貢献する」を経営理念としており、常に新しいものを生み出し、社会を豊かにしていくことが私どもの使命です。ただし、苦心して生み出したものも、時が経てば陳腐化します。どれほど優秀な技術であろうと、永遠にぶら下がっていることはできません。1つのノウハウを大事に取っておくのではなく、どんどん活用分野を広げていく努力が重要です。
――製品の開発だけでなく、市場の開拓も進めていかなくては、ということですね。
寺町
その通りです。機械の回転部分を支える機構、回転ベアリングの歴史を見ても同様です。ベアリングはもともと糸を高速で巻く機械に使われていたのですが、その後、その他の産業機械部品にも転用されるようになり、自動車をはじめあらゆる機械に組み込まれるようになりました。当社の製品も、新しい発想でさらに用途の幅を広げてゆきたいです。
――創造開発に欠かせないのがクリエイティブ人材ですが、どのように育成されているのでしょうか。
寺町
残念ながら、クリエイティビティは座学で生み出せるものではありません。重要なのは、天賦の才を持つ人材をいかに発掘するか、ということだと思います。人それぞれ特性があります。何かを生み出すのが上手な人と、生み出されたものを定着させていくことが得意な人とがいる。どちらも良い特性なのですが、その違いをどう見極めるかがカギだと思います。後者はいわゆる真面目な人が多く、いろいろなチャンスを与えられやすい。ところがクリエイティブな人というのは、一風変わっていることが多く、日本の組織では浮いてしまいがちです。結局、日の目を見ずに終わってしまう人が少なくありません。ですから企業は個々人が自分の能力を発揮できる「場」を、広く与えなければいけない。そうやって才能に光を当てていくことが重要ではないでしょうか。
「頭」の中の開発では市場を動かせない
――「場」を与えることで才能は発掘できる、伸ばせる、と。
寺町
これは、クリエイティブ人材だけにいえることではありません。「場」を与えることで、結果的に、それ以外の人々の才能、個性も磨くことができ、適材適所の人員配置もできるようになるのです。