Opinion② 「 またダメだ」→「ノルマに近づいた」へ!“ 捉え方”を変える認知療法
誰もがストレスを抱える現代社会。しかしその中でも、うつになる人とならない人がいるのはなぜか。その違いは、物事をどう捉えるか=認知の問題にある。認知療法・認知行動療法の専門家である東京家政大学教授の福井至氏が、ストレスが高い環境下でもメンタルヘルス不調に陥らない「 物事の捉え方」を身につける方法を解説する。
物事の捉え方は自分で変えられる
長引く不況や環境変化の中、企業とその社員を取り巻く環境は厳しい。競争が激化し、職場にはゆとりがないといわれている。この状況下で、今やうつ病は極めて身近な「こころの病」となったといってよいだろう。
しかしその一方で、どんなに過酷な状況にあっても元気に働き続けられる人もいる。その違いはどこにあるのだろうか。
ポジティブ心理学の提唱者であるマーティン・セリグマンは、生命保険の外交員の「楽観度」を調査し、楽観度が高い人のほうが離職率が低く、またキャリアや能力以上の成果を上げることができることを明らかにした。
たとえば1日300件ものセールス電話をかけるというノルマがある時、楽観度の低い外交員は、1件かけて断られるたびに「また断られてしまった」と悲観してしまう。しかしセールス電話には、平均1000回かけると1件はうまくいくという確率がある。そのため、楽観度の高い外交員は断られても、「ノルマ達成に近づいて嬉しい」と考えることができるというのだ(セリグマン『オプティミストはなぜ成功するか』講談社/刊)。
このように、同じ辛い仕事や経験をしても、楽観的に捉えられる人と、悲観的に捉える人がいる。その要因としては、遺伝的要因と成育歴のような環境要因の2つがあるとされているが、それらの影響を超えるために人間には意思がある。物事の捉え方を変える方法をきちんと理解して、自らの意思で変えようとすれば、考え方を変えることは可能なのである。
これを具体的に説明するのが、認知療法・認知行動療法の考え方だ。