特集 高ストレス時代を生き抜く ポジティブ・メンタルヘルスケア
仕事のスピード化はとどまるところを知らず、経営環境の変化もはなはだしい。働く人々を取り囲むストレス要因も多様化し、いつ、誰がメンタル不調に陥っても不思議ではない環境に、日本の職場はある。若手を中心に「現代型うつ」という、新しいうつ病が増えているともいわれている。こうした状況下で必要なのは、メンタルヘルスケアを単にそれ個別の取り組みとしてではなく、職場風土づくりと捉えて多角的な取り組みを行っていくことだ。会社ぐるみで「メンタルヘルス対策」=明るい職場づくりをしていくためには何が必要なのか。本当に社員が救われ、企業も生産性を向上する対策を考察する。
社員と会社を救う手立てのポイント
生産性の低下、周囲の業務的・精神的影響の大きさ……社員がメンタルヘルス不全に陥ることで企業が抱えるリスクは、無視できるものではない。不調者に個別に対応するだけではなく、そもそも不調者を出さない“ 抜本的な手”を打つ必要がある。
事実、メンタルヘルス不調に陥る人は年々増えている。厚生労働省の平成22年度のまとめによれば、精神障害などによる労災補償の請求件数は増加傾向にあり、平成22年度は前年より45件増の1181件、2年連続で過去最高となっている*1。
この増加を止める“抜本的な手”としては、多くのアプローチが考えられる。今回取材した企業でも、あの手この手を打っていた。中でも、鍵となっていたのは、図表1の5つだ。
①早期予兆の発見
今回の取材企業に共通していたのは、早期予兆の発見の仕組みを整えていたことである。特にNTTデータ(P40)は労働時間に着目。月に45時間以上時間外労働をしている社員には「疲労蓄積度チェック」を義務づけ、蓄積度が高いと出た社員や希望者には、産業保健スタッフによる面接を実施する。マツダ(P44)では、本人だけではなく職場のストレス度も測る。厚生労働省の基準で120リスク以上だった場合(全国平均は100リスク)、産業医、保健師が管理者とともに問題点を洗い出し、改善のための具体的なアクションプランを構築、実施も見守る。アシックス(P36)も2年に1度、健康推進室が全社員と面談し、普段の様子と予兆を調査するという徹底ぶりである。
どの企業も、問診、面接など、何らかの方法で社員たちの心身の健康状態をまず把握し、治療に至らないほどの疲労度のうちに話を聞いておくなどの対処を行っている。
②メンタルヘルスの基礎知識教育