論壇 自律自走型組織を創造する革新プロデュースのすすめ
より高みをめざして自社は変わる必要がある、と感じている企業や組織のトップ層は多い。しかし、実際に変わるのは難しい。さまざまな手を打ち、一時は盛り上がっても一過性に終わってしまったり、抵抗を受けたりする。その原因は多くの場合、現場の管理者のマネジメントスタイルにメスを入れていないから。“自律自走型組織”を実現するためのマネジメントのあり方・考え方と、変革の仕方のポイントを抽出した。
第1章現場が沈滞化している
先行きの見えにくい事業環境の中で、いまや企業の全ての部門の全ての層での迅速な改革行動が求められている。現場第一線も例外ではなく、身の回りでの自律的な改革行動が求められているが、現場に目を向けると、改革推進以前の問題として受け身体質に陥ってしまっている職場が多いようである。本稿ではこれらの状況に鑑み、これからの「自律自走型組織におけるマネジメント」の基本的な考え方と進め方を紹介する。 まずは、現場の状況に目を向けてみよう。
●指示をしても反応なし
現状の手間隙をかけて新たな取り組みが企画・準備され、ラインに展開されていく。しかしながら、現場は企画側の意図通りに動くとは限らない。
たとえば、ある会社では売り上げ拡大のために新ジャンルの商品の発売が決定され、鳴り物入りで発売された。当初は一応盛り上がったが、その後が続かず結果的には目標未達に。現場の担当者からは「従来の担当商品を売るのに精一杯で、新しい商品など売る隙なんかない!」といった悲鳴が聞かれた。打破のために多くの企業で、さまざまな改革施策が展開されている。本社部門で多く
●なぜ、現場は動かないのか
なぜこのように、現場は経営層や企画側が思ったように動かないのだろうか。
経営学者の伊丹敬之教授は著書『場のマネジメント』(NTT出版/刊)の中で、経営側が企画した改革施策が現場で実践されるまでには、現場の担当者による“半自律的”な意思決定のプロセスが存在すると著している。これは、たとえ、トップからの指示であっても、どこまで指示内容に忠実に行動するかは、本人の判断によって差が出る、ということである。
一方で、人の意識には守りと攻めの二面性があり、放っておくと守り??つまり現状維持意識が顕在化しやすいといわれている。
よって、結果的に伊丹教授のいう“半自律的な意思決定”は改革否定側に振れてしまい、これが改革施策が日の目を見ない主要因の一つとなっているようである。
●自主的な動きは全くなし
別の会社の人事担当役員は次のような悩みを語る。「現場に改革を強く訴えても、誰も動かない。世代交代の進む中で、現役層は自ら改革を企画することを知らない世代になってしまったようだ。
これまでの改革の推進の場面では、彼らの上司が改革を企画する役割で、本人は決まったことを粛々と遂行するという役割分担に慣れ親しんでしまった。その結果、今、自分たちが改革を推進すべき立場に立っても、何をどうしたらよいのか皆目見当がつかなくなってしまっている」。