覆面座談会 営業担当者のホンネ 個人の特性を組織の強みに今育てるべきは“組織営業力”
モノが売れにくい時代になり、営業スタイルも、個人の力量に頼るものから組織力を活かしたものに変わった。仕事が高度化する中で、日々営業の現場で働く若手と管理職は、何を考えているのか。求められる営業教育など、営業担当者が本音を語る。
Part 1若手が考える営業職の人材育成
「お客様の期待を超える」営業に必要な提案意識―営業職として、一人前になるのはどんな時だと思いますか?
A氏:
「一人前」の定義は個人差があるので難しいですが、私はお客様から求められるパートナーになれるかどうかが境界線だと思っています。入社6、7年目になると、商品や業界に関する知識でお客様より優位に立て、会話をしていても自分の決めたゴールに誘導できるようになります。お客様が何か課題を持っていた時、何が必要かはっきりとわからない状態でも、当社の経験や情報を信用して「困っているから解決してほしい」と投げかけてもらえる。そういう関係を築ければ、営業として一人前になったといえるのではないでしょうか。
B氏:
これは自分自身の経験なのですが、3年目の終わりから4年目にかけて一皮むけた感じがあります。先輩の手を離れて、提案、受注、納品、運用までの流れを初めて1人で完結できたのが3年目だったのですが、そこでトラブルを経験したことが大きかったですね。請求書などの紙を読み込んで、数字を自動でデータ化するというシステムをお客様に納品したのですが、文字が読み込めないというトラブルが起きてしまって……。先方にひたすら怒られたのは苦い思い出ですが、いただいた仕事に最後まで責任を持つという経験ができました。
―1、2年目は業務をこなすのに精一杯で、失敗も経験する。その2年間の積み重ねがあるからこそ、3年目から充実してくるのかもしれません。ご自分が所属している営業部を見渡してみて、好成績を出せる人とそうでない人の違いはどこにあると思いますか。
C氏:
基本的なことですが、好かれている人には仕事が集まりやすいですよね。新たな案件が舞い込んできた時も、「あの人ならきちんとやってくれる」と信頼されている人が任されているのを目にします。A氏:そうですね、私も同感です。それに加えて、新規開拓をしていく場面では、情報収集力で業績に差がつくと思っています。業界の分析力やフットワーク、お客様から聞きたい情報を聞き出す質問力などを全て含めた情報収集力に加えて、仕事をお願いしたくなるチャーミングさも持ち合わせている営業が強いのでしょうね。
―論理的な質問ができても、話したくなる雰囲気がないと警戒されてしまいますからね。それ以外で、営業として大切にしていることはありますか。
B氏:
当社でいわれる「御用聞き営業になるな」という言葉を、いつも意識しています。注文をいただけて当たり前の環境に甘んじて、お客様がいったことしか提案できない営業は何も広げられません。「あなたに仕事を頼んでよかった」と思っていただくには、お客様の期待を超えないといけないんです。
たとえばお客様から見積もりを頼まれた時には、金額だけを伝えるのではなく、わかりやすいように見積もり項目の説明をつけるプラスαの気遣いができるかどうかが、実はすごく大切。社内を見渡しても、自分から積極的に提案して、お客様が気づいていないことを気づかせる人が業績を伸ばしています。
―お客様の予想をいい意味で裏切ることを大切にしているんですね。営業として大切な意識だと思います。
吸収する意識がOJTでの成長を促す
―営業職は、集合研修よりもOJTで人材を育成することが多いようですが、皆さんの会社の状況はいかがでしょうか。
C氏:
当社では、半年の研修が終わると配属先の先輩についてOJTが行われます。育成方針は課によって違いますが、1年目は予算を持たずに先輩の事務作業を手伝い、2年目から担当顧客を持って動くようになります。先輩とは普段からコミュニケーションをとって、わからないことは何でも質問するんですが、マンツーマンでの教育なので、相性の問題もあるようです。同期の中には、担当の先輩が反面教師になってしまうパターンも……。
D氏:
確かに一対一だとそういう問題もあるかもしれませんね。当社でも指導社員のもとでOJTが行われますが、Cさんのところとは違って、指導社員以外でも案件ごとに違う先輩が同行するなど、6、7人の営業グループ全体で育てるようにしています。
A氏:
営業は、キャラクターに合わせて一人ひとりやり方が違ってくるので、フレームワークをつくるのが難しいんですよね。自分のやり方に合う先輩を見つけられれば、OJTを通してスムーズな仕事の進め方を盗んでいけるんだと思います。#REF!