企業事例③ 富士ゼロックス “コラボ文化”で本質を追究し全員営業を実現する
問題解決型の営業に力を注ぐ企業は多いが、富士ゼロックスの特徴は、その重要性を全社で理解し、支えていることだ。問題解決の視点で物事を捉えることが習慣化されている同社では、日常、社内の各部署で導き出された問題解決ノウハウを顧客に惜しみなく提供する独特の風土を持っている。営業担当者は会社の代表者。代表者を通じてお客様にお役立ちすることが全社員の役割であるとの認識が根づく、富士ゼロックス流の問題解決型営業を紹介する。
付加価値づくりに効く問題解決力
製品の技術力だけでは購買に直結しない時代。営業担当者の人間性や魅力が、顧客の懐に入り込むうえで大きな影響を与える要素になっているのはいうまでもないだろう。カラー複合機をはじめとしたオフィス機器を取り扱う富士ゼロックスも例外ではない。
同社の人事本部教育部営業・SE力強化グループグループ長の森本聡氏は、自社が置かれている状況についてこう話す。「当社は今年50周年を迎え複合機販売中心の事業からソリューション・サービスの提供を中心としたコミュニケーション・カンパニーへの移行をめざしています。お客様の経営に関するコミュニケーション上の課題を発見し、ソリューションを提供していくことが営業に求められています。お客様のコミュニケーションはあらゆる部門に関わるため、お客様の業界、お取引先、仕事の全容を把握していなければ、お客様のお役に立つ提案はできません。全ての企業に当てはまるような提案ではなく、お客様ごとのお客様視点の価値ある提案ができる営業人材の育成こそ、当社がめざすものです」
すなわち、営業担当者を顧客から支持される“魅力ある存在”にする――そのために富士ゼロックスが掲げているキーワードが、「問題解決力」だ。「一言で問題解決力といっても、若手社員に求めるものと上位層の社員に求めるものとでは、問題解決力のレベルにも違いがあります。
若手の営業担当者が事象レベルの問題発見・解決であるならば、中堅は部門課題・事業課題、そしてさらに上位層は、経営者レベルの視点での問題解決力、というように、問題の捉え方を広く・深く追究する必要が出てくる。
当社が営業担当者に求めるのは、お客様の課題を洗い出し、それを解決するためのご提案をするというものです。『お客様理解の違い』が『営業力の違い』と認識し、お客様理解を通じてお客様との新たな次元の関係性を築いてゆくことが最終的には他社との差別化につながるものと考えています」
知識より経験・実践「言行一致」を重視する
同社では、新入社員時代からあらゆる研修に問題解決力に関するプログラムを取り入れ、主体的に問題を発見・解決する能力を強化し続けてきた。中でもビジネスの第一線で活躍が期待される営業担当者は、提案の善し悪しがお客様の満足と信頼関係構築、ひいては会社の業績に直結することになる。