Opinion① 営業プロセス管理とは“ 考える”営業を育てること
ITを駆使し、データベースを構築し、営業プロセス管理を導入する企業は多い。そうして指標を集めることも重要だが、大事なことは、集めた指標をもとに考えを深めていくことである。営業プロセス管理とは、ITを駆使してデータを集めることではない。コミュニケーションをとり、考えることを目的にしているのだ。
指標をきっかけに“考える営業”を極める
営業プロセス管理というと、情報システムを導入し、1日当たりの訪問件数や1社当たりの訪問回数といったさまざまな指標のデータベース(DB)を構築することに主眼が置かれがちだ。だが、ここに主眼を置くと失敗する。営業プロセス管理で重要になるのは、“考える営業”を行うことである。
では、なぜ、今、“考える営業”が必要なのだろうか?
営業プロセス管理の対極にあるのがアウトプット管理だが、これは、売上高や利益などの成果のみを評価する管理方法だ。つまり、“結果オーライ”なので、営業のプロセスを上司が管理することがない。したがって、個人の“勘と経験”に基づいた営業スタイルになる。
過去の成功体験の繰り返しは、営業担当者当人にとっては、取り組みやすい方法で、うまくいけば、“勝ちパターン”として自信にもなる。しかし、同じパターンの繰り返しでは、新しいものを求める顧客の声には応えられない。
しかも、今や顧客の問題解決は、営業担当者1人で解決するものではなくなっている。技術やサービスなど、複数の部門が連携してより高度なソリューションを提供することが求められている。その際、指標があれば、異なる部門の人にとっても判断の拠りどころとなり、共通認識を持つことができる。
ここに、営業プロセス管理のもう1つのポイントがある。
すなわち、営業だけではなく全社のコミュニケーションを活発にするということだ。これが“考える営業”にも不可欠である。
原因を個人に帰せず、問題の原因を探求する
それでは、具体的な方法を見て行こう。営業プロセス管理は、営業活動を把握するために、「訪問件数」「商談に要した時間数」などのプロセス指標を設けて行う。そして、指標の変動を見て、どの行動を変えていけば問題が解決するのかを考えていく。いわば指標は考える手がかりであり、指標があることで考える回数を増やすことができるというわけだ。ここを押さえれば、営業プロセス管理の実施は、難しいものではない。
企業の中には、営業情報化システム(SFA)などを導入し、こうした指標を集めているところも多いが、誤った使い方をしている企業も散見する。
たとえば、1日の訪問件数を指標とする。目標訪問件数5件に対し、4件しか訪問できなかった部下を、上司が叱咤激励し、頑張ってもう1件訪問させるといった対応をとっていては考える機会が生まれない。
指標により見えた問題を、営業担当者個人の問題として捉え、それを管理してしまうと、職場が息苦しくなってくる。