企業事例3 ユニ・チャームプロダクツ 社員の距離を縮め活性化リーダーを育む「運動会」
コミュニケーション不全、組織活力の低下が深刻化してきた昨今、日本企業を中心に昔から行われてきた活性化施策、「社内運動会」を復活させる企業が増えてきた。ユニ・チャームプロダクツもその1社である。運動会の活性化の効果、そして運営上の過程や工夫とは。
組織風土の改善をめざし運動会を復活
組織活性化の方法にはさまざまある。多くの企業では、研修を行ったり、新たな制度を設けたりしているが、ユニ・チャームプロダクツでは、1990 年代に入り途絶えていた運動会を2004年に再開した。キッカケは、社員の意識調査だった。
2003年に社員意識調査を実施したところ、「生産部門の意識が(さまざまな観点で)低い」という結果が出たのだ。そこで、組織風土の改善策を検討すべく、トップの肝入りで風土改善委員会が設置された。
風土改善委員会では、まず、社員がどんな不満を抱えているのかを明らかにするため、アンケート調査を実施した。その結果、「社員がお互いに助け合わない」「挨拶をしない」など、さまざまな不満が寄せられた。
これをさらにKJ法を用いて問題の根本を探ったところ、組織の活性化のためには、「部門間の協力」や「優れたリーダーシップ」「部下と上司のコミュニケーション」などが求められていることが明らかになった。
解決策として浮上してきたのが「運動会」だ。普段交流のない部署の人同士が競技を通じて交流できる。また、チームで一致団結して闘うため、仲間意識が醸成される。まさに風土改革、組織活性化の理想的な手段と判断したのだ。
折しも、2001年に社長に就任した高原豪久氏は、一人ひとりが汗をかいて革新の震源となり、個々の振動が会社全体で共鳴し合い、変化し合う「共振の経営」を推進していた。役職や組織に関係なくみんなが協力し合ったり、競い合ったりする運動会は、「共振の経営」に通じるものとトップも賛同。こうして運動会は復活した。
責任者を巻き込み1200人参加の大運動会に
経営トップのお墨つきを得て復活が決まった運動会だが、その開催までの道のりは容易ではなかった。
運動会の運営は、新たに立ち上げた「運動会実行委員会」(以下、実行委員会)に任された。風土改善委員会のリーダーだった村上輝彦氏も、運動会を提案した立場から実行委員に立候補。同じ風土改善委員で運動会の開催に意欲的だった乗友真由美氏も実行委員のリーダーを引き受けた。2人は各部署を回り、協力してくれそうな人に直接声をかけ、20人ほどのメンバーを集めたが、最初からスムーズにことは進まなかった。
開催が決まるや否や、「そんな面倒くさいこと、どうしてやるんだ?」「休みの日まで会社の人と会いたくない」といった批判が殺到したのである。そこで、村上氏と乗友氏は、賛同者を増やそうと、3 交代制の現場の朝礼に毎回出向き、熱心に運動会をPRしたが、冷めた反応しか返ってこなかった。「運動会のポスターを掲げ、“運動会をやります!”と元気に宣伝しても、しーんとしたままで、前向きな反応はありませんでした」(乗友氏)