連載 金井壽宏の「人勢塾」に学ぶ。試す! 人と組織の元気づくり 第 6 回 アプリシャーティブ・インクワイアリー(AI)
成熟社会。正解のないビジネス現場。社内のコミュニケーション不足――これらの課題に、即効性のある薬などないことは、誰もが感じているだろう。この状況に風穴を開ける術は、全くないのだろうか?その問いに挑むのが、神戸大学で金井壽宏先生が主催する第4期「人勢塾」。本誌では、「人勢塾」全10回の授業をレポート。施策1つで問題を解決するのではなく、組織全体へ多様なアプローチをする。そんな「組織開発」の手法を学び、ぜひ現場で試していただきたい。
今回のテーマは「A(I AppreciativeInquiry)」。「ポジティブ組織開発」とも呼ばれ、組織の強みや可能性を引き出す変革手法である。講師は、本間正人先生(らーのろじー代表・京都造形芸術大学教授)。ケースウェスタンリザーブ大学で学んだ国内のAI第一人者だ。AIの魅力を先生はこう語る。「従来の組織変革は、『何が問題なのか?』と欠陥を追及し、それに基づく是正活動が主だった。ところが、欠陥を穴埋めしていく感覚では、可能性が広がらない。AIは『こうなったらいいな』と未来志向で話すため、時にケタ外れの成果が期待できます」
シンプルでワクワクのある組織開発
AIを他の組織開発手法と比較する時、以下の特徴が挙げられる。
問題解決ではなく理想実現…組織や個人が持つ「強み」に着目し、内在する可能性や活力を対話で引き出す
上意下達ではなく全員参加型…全員でヴィジョンを構築するため、組織改革に対する当事者意識が芽生える
変革の方向性とエネルギーの両面作戦…コーチング同様、頭で考えた「やるべき」ではなく、ハートから出るワクワクの「やろう!」へ導く
シンプルなプロセス…プロセスは後に記す「4Dサイクル」で、極めてシンプル
予想を超えた成果…メンバーの創造性を引き出すため、改革自体に命が宿ったように、自立的な発展を見せる