KEYWORD7 日本のおもてなし 普通の人々が持つ仕事への誇りこそ 世界に通用する日本の魅力
外国の人々を惹きつけるサービスを育てていくうえで大きな力となるものは、私たち一人ひとりに宿っている「察する」力やプロであろうとする姿勢。永らくサービスの世界に身を置いてきた里岡美津奈さんが、日本のおもてなしの魅力と可能性を語る。
日本人が気づいていない日本の良さ
ANAのキャビンアテンダントとして、世界の要人が乗るVIP 特別機を15 年間担当し、その後、旅行コンサルタントとして海外からのVIPをお世話してきた。その経験から、日本のサービスは必ず世界に通用するという確信を持つようになった。
私たち一人ひとりが生来持つ資質を上手に活用していけば、日本のサービスは国際競争力のあるビジネスとなって将来に資することができるだろう。
海外のお客さまを楽しく、快適にしてくれるものは、一流旅館や高級リゾートはもちろんのこと、日本の至るところに溢れている。送迎車の運転手を例に挙げるなら、所定の場所と日時にぴったりと車を着けてくれることにいたく感激される。あるいは新幹線をはじめ電車を利用した際の定時運行にも驚かれる。車掌、窓口の係員の礼儀正しさについても然りだ。
また、意外だったのは、デパートの地下食品売り場だ。海外観光客にとってそこはワンダーランドと呼ぶにふさわしい。魅力的な陳列、一つひとつの商品のパッケージと彩りの良さ、そして何より売り子さんの笑顔と、気が利く応対。しかも試食までさせてくれ、買わなくても「ありがとう」と声をかけてくれる。それは普通の旅行客だけでなく、一流レストランで会食する機会の多いVIPにとっても例外ではない。彼らは夕方のデパ地下巡りを楽しみにしているのだ。
こうした魅力は、ありふれた場所、ごく普通の日本人の中に宿っている。気持ちのこもった挨拶、テキパキとした応対、そしてちょっとした心遣い。私たちにとっては至極当たり前のきちんとした仕事ぶりが、海外の人々に強くアピールするのである。
決定的に違う日本人のもてなしと外国人のサービス
日本のファーストフード店が、海外の同じチェーンよりも清潔で、感じが良く、スピーディーなのは誰しも経験するところだ。こうした例に限らず、日本ではどんな人も自分の仕事を精一杯きちんとこなし、決して投げやりな態度で周囲と接したりなどはしない。海外に比べ、働いている人々の意識が絶対的に違う。
それは私たち一人ひとりが、自らの仕事に誇りを持っているからではないだろうか。業種や階層を問わず、それぞれの立場で精一杯プロフェッショナルであろうとしている。一般の人々のレベルが非常に高いこと、それが日本の特徴であり、海外の人を魅了する特質となっている。
このような接し方ができるのは、心を配ることで心地良い空間や時間を、そして好ましい体験を届けたいという文化が息づいているから。