KEYWORD4 変わるアジア市場 “急成長”と“地域格差”で激変 日本企業が捉え切れないアジア市場
急速な発展を見せるアジア市場。日本企業にとっては、身近であり、すでに長く取引を続けてきた市場である。しかし、大泉啓一郎氏は「現在の日本企業はアジアのリーダーであった過去を引きずり、市場を正しく理解できていない」と指摘する。なぜそのような事態が起こっているのか。その背景とアジア市場の現状について話を聞いた。
「工場」から「市場」へ役割が変わるアジア
近年、日本企業にとっての“アジア”の存在、その意味が大きく変わってきている。
以前はアジアといえば日本の、特に大企業にとって、「工場」であったが、それが「市場」へと変わった。これまでアジアの魅力は“安価な労働力”。それがリーマンショック以降は、“市場”という側面が強調されることになった。
その背景には“日本市場の停滞”と“アジアの躍進”がある。
日本は人口減少や少子高齢化が進み、市場は縮小傾向にある。だからこそアジアに新たな市場を求めなければならない。
アジアの躍進については名目GDPで日本と比べてみると、よくわかる。ここで述べるアジアとは中国、NIES(韓国、台湾、香港、シンガポール)、ASEAN5(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム)、インドを合わせたものだ。
名目GDPでアジアが日本に追いついたのは2004年。2010年には中国が単独で日本を追い抜き世界第2位の経済大国となる。同時に2010 年はアジアが日本の2倍を超える規模にまで成長した。追いつかれてからほんの6 年しか経過していない。しかし2020年には、アジアは日本の4倍に達すると見込まれる。(図表1)
まもなく日本の4倍もの市場がアジアに現れるということだ。その市場を日本企業が無視するわけにはいかない。それはもう必然だろう。
けれども今、日本企業が今後重要な市場となるアジアを十分に研究、熟知して攻めているかというとそうではない。
これまでアジアのリーダーであった日本は、いまだにその振る舞いから抜けることができていない。そのため、日本製品ならば売れるといわんばかりに市場調査がおろそかになっている。急激なアジア市場の変化も把握できていないのだ。
アジア市場を把握するカギは“格差”にある。
現在の中国の一人当たりGDPは5000ドルで、日本は4万ドル。そう聞くと、中国全土が日本の10 分の1ほどの生活レベルのように思えるが、実際はそうではない。