KEYWORD1 働き方の未来 「2025年の働き方」と人事部のあり方
世界規模の研究を通じて「2025年の働く人の日常」を生々しく描き出した、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授著『ワーク・シフト』。「“漫然と迎える未来”には孤独で貧困な人生が待ち受け、“主体的に築く未来”には自由で創造的な人生がある、だからこそ我々は働き方を〈シフト〉しよう」と提唱する本書は出版以来、大きな話題と評判を呼び、自らの働き方を問い直そうとする人が増えている。そこで本稿ではまず、書籍『ワーク・シフト』に描かれた2025年の働き方の未来図を紹介し、それを踏まえて、いま人事部にできること、これからなすべきことは何であるのかを、著者のグラットン教授に伺った。
産業革命以来の大変革の波がくる
蒸気機関という新しいエネルギーが工場に一挙に普及した19 世紀イギリスの第二次産業革命は、仕事のあり方を根本的にシフトさせた。まずエンジニア階層が台頭し、職人の地位が低下した。工場の現場では、雇用主による管理が強まり、職種が専門分化し、業務は細切れになり、ピラミッド型の組織階層が形づくられた。労働者は自律性を奪われ、交換可能な部品として扱われるようになった。
今後数十年の間に、仕事の世界ではこれと正反対の変化が起きる可能性があると『ワーク・シフト』は説いているすなわち、ピラミッド型の組織とゼネラリスト的な技能に変わって、水平型のコラボレーションや、スペシャリスト的技能が復活しようとしている。今回の変化を突き動かしているエネルギー源は、コンピューターのデータ処理能力だ。前回の産業革命と違う点は、変化の影響が直ちにグローバルに波及し、変化のスピードもこれまでになく加速しているということだ。
2025年の働く人の日常の物語
グラットン教授が主宰する「働き方の未来コンソーシアム」の参加企業世界45 社の幹部ら200名は、働き方の未来に影響を及ぼす5つの要因(図表1)を踏まえて、それぞれに未来の働き方の物語を描いた。それらを土台に、「2025 年の働く人の日常」が、次のような具体的なエピソード(物語)の形でまとめ上げられている。