調査レポート 「日本企業の経営課題2012」調査に見る“経営の道標” 企業の持続的成長のためにグローバル経営時代の人材を考える
日本企業の経営者を対象に行った調査で、事業・組織構造改革の実態が明らかになった。
この調査は毎年、日本能率協会(JMA) が行っているもので、今年は548 社から回答を得た。
本稿では、喫緊の課題として注目されるグローバル経営における組織、グローバル人材のあり方について紹介する。
日本の「グローバル人材」は世界で戦えるか
多くの企業経営者や人事担当者が「グローバル経済の進展に、グローバル人材の育成が追いついていない」と嘆き、マスコミでも「グローバル人材」をテーマに語られない日はない。
その一方、グローバル人材の育成を着々と進めている企業もある。
「入社して3年でやっと一仕事覚えるとか、そういった話では遅過ぎる」といい切るのは大手メーカーの人事担当役員だ。これまでの日本企業は、新人においては2年、3年とじっくり時間をかけて自社流の人材を育て上げてきた。その後の中堅の社員、経営者層の育成も然りである。
さらに、先の役員は「今の日本の若い世代を見ていると、世界の若者と伍していけるのかと不安にかられる」と、切実な胸の内を語る。理由は、特にアジア新興国の20代の社員が死に物狂いで働き、勉強している姿を目にしているからだ。こうしたコンペティターの若手社員に、日本企業は対抗する術を持っているのだろうか。
この企業では、正規社員として守られた立場や甘えを断ち切るために、敢えて一部の若手をローカル人材と同じ条件で海外法人採用を始めたのである。競争というものがいかなるものかを理解してもらうため、若手の意識変革と実力主義を後押しする仕組み・制度の構築に乗り出したのだ。
その背景には、子会社であっても成果を出せば、本社の経営陣として参画でき、本社のトップになることも可能であることを示唆している。経営そのものが徹底的にダイバーシティ化しているという自負があるがゆえのショック療法ともいえるが、真にグローバルな優秀人材の確保と活用をしていかなければ生き残りも難しいという危機感の表れでもある。グローバル経営の時代はそこまで来ている。
第34回 当面する企業経営課題に関する調査の概要
◆調査目的
日本企業が抱える当面、中期的に対応を迫られる重要な経営課題を洗い出し、その具体的な対応策を探る。これにより、企業の経営革新に役立てていける指針を、JMAは提供していく。1979年から毎年実施しており、今回で34回目。
◆調査対象
全国の主要企業の経営者(5000社)/全国の上場企業2465社+ 非上場企業(従業員規模300人以上)2535社を無作為に抽出
◆調査期間
2012年8月