連載 金井壽宏の「人勢塾」に学ぶ。試す! 人と組織の元気づくり 第7回 「リアルタイム・ビデオ(RTV)」
成熟社会。正解のないビジネス現場。社内のコミュニケーション不足――
これらの課題に、即効性のある薬などないことは、誰もが感じているだろう。
この状況に風穴を開ける術は、全くないのだろうか?
その問いに挑むのが、神戸大学で金井壽宏先生が主催する第4期「人勢塾」。
本誌では、「人勢塾」全10回の授業をレポート。
施策1つで問題を解決するのではなく、組織全体へ多様なアプローチをする。
そんな「組織開発」の手法を学び、ぜひ現場で試していただきたい。
「体験」を「映像」で記録する
社内でイベントや研修を行った際、映像記録を残したことがあるだろうか? あったとしたら、それはどんな目的で、誰に見せるもので、どのような効果を期待した映像だっただろうか?
今回のテーマは、「リアルタイム・ビデオ(RTV)」。体験を映像で記録し、その映像を使った振り返りや、そこからの学びを期待するものだ。ゲスト講師は、神戸芸術工科大学大学院准教授・曽そ和わ具とも之ゆき先生。「記録のデザイン」をテーマに、ワークショップや会議などの記録・編集・発信方法を研究。情報職工集団『infoGuild』を立ち上げ、多方面で活動をしている。曽和先生のリアルタイム・ビデオとの出会いを、金井先生はこう紹介した。「2011年12月に、同志社女子大の上田信行先生と東京大学の中原淳先生のコラボレーションで行われた『Unconference』というイベントに招かれた時のことです。宿泊型で1.5日にわたるこのイベントに、曽和先生はずっとカメラを片手に参加していた。そしてイベントの最後に、内容盛りだくさんの1.5日を5 分ほどで振り返る映像を観せてくれたのです。編集の速さとその内容に驚いたのはもちろん、そこにいた全員、特に準備から中心的な役割を果たした上田ゼミの学生さんたちは、感動のあまり涙していましたね。今回、曽和先生には映像記録の技と、その活用法をお聞きします」
その日の学びを、その日に味わう
曽和先生を講師として招いたのは、合宿の2日目。しかし、前日の本間先生の回から、先生の姿はあった。手にはもちろん、ビデオカメラ。撮影スタッフがもう一人と、固定の俯瞰撮影用カメラ、合計3つのカメラがその一日を追う。初日の終了間際、完成した映像が披露された。わずか5 分程度ながら、しっかり網羅された一日の学び風景。研修所周辺の紫陽花や雨に濡れたガラス越しの風景が、「今日」という日をさらに意識させる。何より、当日の出来事があっという間にクオリティ高いビデオに仕上げられたことに、そしてその一日を味わい直せたことに、受講者は大きな拍手を送った。
Live Report
全10回の7回目。合宿2日目は、前日を撮影した映像(RTV)が教材。自分たちが体験した一日を、テロップをつけることで効果的に伝える方法を検討。「体験を記録する」ことの意味や価値、RTVの作り方・活かし方に焦点を当てた半日となった。