TOPIC 書籍『プレイフル・ラーニング』発売記念イベント 「Toyful Meetup」レポート 「問い」を持ち寄り、語り合い、探究する 人々が能動的にかかわる学びの場づくり
2012年12月8、9日、奈良県吉野にて書籍『プレイフル・ラーニング』(三省堂)の発売を記念して、
同書の著者、同志社女子大学上田信行教授と東京大学中原淳准教授が主催する
ワークショップイベント「Toyful Meetup(トイフル・ミートアップ)」が開催された。
同イベントには「大人の学びの場づくり」のヒントを求め、
企業の人材育成担当者や教育、人材育成に関心の高い社会人、学生総勢100名が集まった。
泊りがけで行われた濃密な2日間のイベントをレポートする。
2012年12月8 日正午、普段はひっそり静かな近鉄吉野線の終点吉野駅には大勢の人の姿があった。「Toy(遊)とToi(良質の問い)に満ち溢れた2日間をつくりませんか?」こんな呼びかけに応えて、Toyful Meetupに集まった大勢の参加者たちだ。
日本に「ワークショップ」という言葉を普及させ、数々のワークショップの実践で知られる上田氏と、企業における実証的な人材育成研究を進める一方、ラーニングバーを始め、数々の新しい学びの場づくりをプロデュースする中原氏が仕掛ける学びのイベントということで、関東、近畿地方からも4、5時間かけ多くの参加者がやってきた。その中には、神戸大学、金井壽宏教授の顔も見える。
初日の会場は、宿泊場所でもある旅館「竹林院」の大広間。最初のセッションは、誰かとペアになり色紙やカラフルな布やモールなどを使った「名札づくり」。思い思いに手を動かすうち、「すてきな名札ですね。お名前はなんとお読みするんですか」などと自然にコミュニケーションが生まれ、いつの間にか参加者同士が打ち解けてしまう、上田氏ならではの仕かけだ。
13時過ぎ、ほとんどの参加者が揃ったところで、同志社女子大、上田ゼミの学生たち指導のもと、音楽に合わせてダンスの練習が始まった。初めは踊ることに戸惑う参加者も多かったが、徐々に硬い雰囲気もほぐれ、自然と笑顔も生まれ、リラックスした雰囲気に。
「ダンスや音楽は、場を温める最高のツール。ダンスが難しくても、身体を少し動かすだけで堅苦しい雰囲気が一気に和みます」(上田氏)
ディープに話して頭をディープに動かす
上田氏はオープニングで、今回実施する学びのスタイルを概説した。「今日は、Learning3.0に挑戦します。Learning1.0 は、座ってレクチャーを聞くスタイル。それも大事ですが、それだけでは頭が働かず、硬直的な学びになってしまう。そこで、身体を使って、表現して…といったワークショップ型の学びLearning2.0が生まれました。しかし、本来は頭を動かすために身体を動かしていたはずでしたが、身体を動かすことだけがフォーカスされるようになってきた傾向もあります。そこで今回は、とことん頭を動かすLearning3.0に挑戦します。山深い吉野でたくさん話をして頭をディープに動かしてください!」
続いて中原氏が今回のイベントのテーマについてこう話した。「テーマは、『Toyful Meetup(問いや探究に満ちた集まり)』です。企業では“問題や課題”について話し出すと、とかくネガティブになりがちですが、それを“いかに楽しみつつ深めるか”を実験する場と考えてください。Meetup にはダイナミックにインフォーマルに集合する、といった意味がある。つまり祭です。祭は近代まで、見るものではなく、参加するものでした。職場でもどんな場でも観客化した瞬間、やらされ感が漂い、それが問題を生んでいる気がします。そこで今日は、みんなで問いを持ち寄り、全員が乗れる船をつくり、その場でじっくり考えていきたいと思っています」
さらに、両氏に共感して参加した金井氏が「仕事柄こうした場は主催側にいるほうが多いので、今回は一参加者であるということが非常に楽しいです。今回の『Toyful』というテーマ、とても秀逸ですね。私はいい教育者もいいマネジャーも答えを教える人ではなく、『問い』の出し方が絶妙にうまい人だと思っていて、ゼミの中でも、問いかけることが私の仕事です。『Toyful』という言葉、大事にしたいですね」とコメントした。