論壇 グローバル化への学習意欲と効果が高まらないのには理由がある 本当に効くグローバル研修の 具体的アプローチとは
1一人の人間として「グローバル」と向き合う
国内市場の縮小が見込まれる中、企業にとってのグローバル化は待ったなしの状況であり、グローバル化に対応できる「人材の育成」「組織のグローバル化」は重要な経営課題となっている。私は1992 年から20 年間グローバル人材育成の現場で仕事をしているが、グローバル人材育成(当時は「国際人育成」)はその当時からずっと経営課題の1つとしていわれ続けてきた。もっといえば、日本人の国際感覚や英語力についての課題は、開国を迫られ世界と向き合うようになった明治維新から始まる永遠のテーマともいえるのではないだろうか。
しかしながら、この積年の課題が企業の経営課題リストから一向に外されないばかりか、人事担当者から「教育を実施しても、なかなか効果が上がらない」「グローバル化や英語への意識が高まらない」という焦りが込められた言葉が、最近さらに多くなってきているのを感じる。そして、そもそも「なぜ効果が上がらないのか?」の原因がつかめない。ゆえに具体策として「何をすれば良いのかわからない」という根本的悩みが解消されていないことも感じる。
筆者は、グローバル化に対するマインドセット、モチベーションアップを目的としたプログラムを開発、実施してきた。このプログラムは、単なる異文化への気づきやコミュニケーション力を高めるものではなく、「自分自身が一人の人間として、いかにグローバル化と向き合うのか、いかに人々と団結し個々の能力が発揮される組織をつくり、グローバル社会に貢献していくのか」を、自己や他者と対話する中で深く考える。いわば自らの「グローバル・ビジョン」をつくり上げ、自己力と実践力を鍛える、新しい形のプログラムである。
私がこのプログラムでお伝えするメインメッセージ、そして私自身の「ビジョン」は以下の通りである。「 今日本の社会が、日本の組織が、日本人同士が、『異文化化』してきている。その結果、事業部間、部署間、役職間、世代間、個人間の連携やコミュニケーションがとりづらくなっている。これではグローバルに出ていく前に足元が危うい状態だ。また現実にグローバル化の見えない阻害要因にもなっている。今こそ、日本人同士がコミュニケーションを良好化し、一致団結し元気にならねばならない。それがグローバルで成功する、強い組織を創る基礎となる」―本稿では、その実際の教育やコンサルティングの現場で聞こえてきた生々しい声を紹介しながら、企業におけるグローバル人材育成が困難とされる根本原因とその解決方法を探っていきたい。
2効果の上がらない根本原因とは
①グローバルが他人事