人材教育最前線 プロフェッショナル編 自らの客観化を促せば、 イノベーションが起こり、人は育つ
世界のソニーらしい自由闊達な発想から誕生したソニー損保。
誰も挑戦しなかったことをいち早く成し遂げるというソニーのDNAを受け継ぎ、損保市場に新たな時代を切り開いた。
ダイレクト自動車保険のリーディングカンパニーとして展開してきた同社の目下の課題は、創造する風土を大切にし、イノベーションを続ける企業文化を絶やさないという点にある。
同社の立ち上げから人づくりに携わってきた齋藤則明人財開発部長は、「教育とは自己の客観化により、自らなすべきことに気づいてもらうこと」だと話す。
こうした育成観に至った背景には、若手時代の出会いと経験があった。
革新的なビジネスにふさわしい人材育成
代理店を介さないダイレクト販売、リスク細分型自動車保険など、1998 年の設立以来、斬新な商品とサービスを次々と提供してきたソニー損保。
齋藤則明氏は、同社の創業準備期から一貫して人事担当として参画。革新的なビジネスにふさわしい人材育成を具現化し、日々進化させている。
現在、同社が取り組んでいる人材育成の目標は、「新しい顧客価値の創造」。これは、会社が大きくなろうとも、創業時の自由闊達なマインドを失わず、お客様にとって価値ある商品やサービスを創造していくことにより、持続的に成長していこうというものだ。
そのために人材育成の最も大切な役割は、社員に「気づき」を与えることだと齋藤氏は語る。「今の自分に何が足りないのか、他のメンバーからどう見られているのか。自らを客観的に見つめるため、会社のあらゆる場面で気づきを与えることこそ、教育の最も重要な目的だと思うんです」
気づきを促す機会があれば、人は自発的に変わる。それが齋藤氏の教育観であり、人づくりにおいてのポリシーだ。
主観の客観化を繰り返すことで見えてくる価値
齋藤氏がこの信念にたどり着いたきっかけは、20代の後半から30 代の前半のある体験に基づいている。
1987年、好景気の最中に齋藤氏は新卒でセゾングループのディベロッパーに入社。ニュータウン、マンションから、ホテル、ゴルフ場、アミューズメント施設などの開発や販売、運営に携わった。
やがて同グループにより運営会社がいくつも立ち上がったことに伴い、社員の募集から労働環境の整備、労務管理などを担当。人事の世界へと足を踏み出していった。