Opinion 総論 経営や市場が期待するイノベーションとは イノベーションはビジネスセンスをもって 意図的に引き起こすもの
イノベーションは企業にとって、これまで以上に重要な課題になってきている。
経営陣が求めるイノベーションを、間接部門である人事部・人材開発部は、
どのようにすれば支援・推進することができるであろうか。
そもそも、イノベーションとは何であろうか。
名だたるグローバル企業がこぞって注力する今、注目の戦略コンセプト、
「リバース・イノベーション」に詳しい慶應義塾大学の小林喜一郎教授に、
イノベーションとは何かを伺った。
イノベーションを捉え直す
「イノベーション」と聞いて、読者はどのような事柄をイメージされるであろうか。これまでの延長線上にはないような新しい技術や製品を作り出すことだと思われてはいないだろうか。そしてイノベーションが起きるかどうかは、ややもすると偶然性に委ねられているなどと捉えられているのではないだろうか。世の中の変化、新興国市場の台頭、新しい競争相手の出現、そして競争ルールの転換が起こる中で、イノベーションとはもはや偶然の産物ではなく、企業が生き残るための必然の課題となっている。戦略論の世界ではイノベーションを、「他社に先んじて市場・業界における競争ルールを変更し、かつ収益の上がる事業構造を構築すること」と、技術や製品の問題にとどまらず、ビジネスモデルの問題としてより幅広く定義づけしている。そうであるならば、企業にとってイノベーションとは、ビジネスセンスをもって意図的に引き起こすことができる事柄なのである。
イノベーションに取り組むポイントとは
従来イノベーションの見方には、「プロダクト・イノベーション-プロセス・イノベーション」あるいは「ラジカル(急進的)イノベーション-インクリメンタル(漸進的)イノベーション」などが一般的であった。しかしイノベーションに意図的・戦略的に取り組んでいくためには、もっと扱いやすいようにタイプ分けをして考える必要がある。たとえば、ビジネスモデルの構成要素(Who、What、Howの3軸※1)に沿って考えると、次のような3分類も可能であろう。
❶Whatを基軸としたイノベーション (プロダクト・イノベーション)
❷Whoを基軸としたイノベーション (新顧客創造イノベーション)
❸Howを基軸としたイノベーション