TOPIC-①「リフレクション・ラウンドテーブル」創設者フィル・レニール講演会レポート 経験を語り合うコミュニティーがミドルマネジャーの力を引き出す
企業の成長のカギを握るミドルマネジャーたち。その能力開発には、互いに経験を語り合い、対話を繰り返すという“学び合うコミュニティー”を構築することが有効だという。
それが「リフレクション・ラウンドテーブル」だ。2010年6月15日、本プログラムをヘンリー・ミンツバーグ教授とともに創設したフィル・レニール氏が来日。レニール氏による特別講演会と、日産自動車と富士通ビジネスシステムの担当者を交えたパネルディスカッションが行われた。
【講演会】
組織改革の原動力となるマネジメントコミュニティー
フィル・レニールコーチングアワセルブズインターナショナル エグゼクティブ・ディレクター/ファウンダー
フィル・レニール氏がヘンリー・ミンツバーグ教授とともにコーチングアワセルブズインターナショナル社を設立したのは2006年後半のこと。わずか4年弱の間に、「コーチングアワセルブズ」(日本では「リフレクション・ラウンドテーブル」という名称)は世界中の企業や団体に広がっている。
レニール氏はまず、このプログラムが誕生した経緯について話し始めた。
「2003年、私はあるIT企業の技術担当取締役をしていました。ところが、ITバブル崩壊により、私の会社は組織風土がまったく異なる大手企業に買収され、3度にわたる人員整理が行われました。そのうえ、プロジェクトの多くをウクライナへオフショアしなければなりませんでした。
私も同僚も毎朝『会社に行きたくない』と思いながら、腹に鉛を抱えた気分で出社していました。
以前はそうではありませんでした。ワクワクしながら新しい仕事に取り組んだり、チームを鼓舞して目標を達成したり。毎日、達成感があって、充実した日々を送っていたのです。
それが今や、仕事が嫌いになり、毎日職場のデスクにうつむいて座り、言われたことをただやるだけ……。希望を失ったことで、マネジャーらしさも失っていたのです。そこで、母の再婚相手であり、経営学者であるヘンリー・ミンツバーグ教授に相談を持ちかけたのです」
困り果てたレニール氏に対して、義父ミンツバーグは次のように助言したという。
「時間がないなら、毎週定期的にマネジャーたちとテーブルを囲んで、自分たちが経験したこと、苦労していることについて互いに語り合うといいだろう」と。この助言に従ってレニール氏は週に1度、マネジャーたちを集めて75分間のランチミーティングを行うことを決めた。そして、マネジメントスキルを学びながら、自分たちの経験や課題について語り合うことを続けた。
すると、メンバーの能力もモチベーションも業績も短期間で向上。すぐに第2、第3のグループが立ち上がり、社内で一気に広がった。レニール氏はその効果に確信を抱き、この活動を広めるため起業するに至ったのだという。
経験の共有と内省で、マネジャー自身が変わる
「ありのままの経験を、マネジメントのコンセプトに照らし合わせて思慮深く内省することこそ、マネジメントを学ぶ最も有効な手段である(ヘンリー・ミンツバーグ著『MBAが会社を滅ぼす』より)」という考え方が、このプログラムの学習理念となっている。
具体的には、マネジャーたちが、週に1回、75分のミーティングセッションを20~30回重ねる形で行われる。マネジャーたちの内省を手助けするのは、ヘンリー・ミンツバーグ教授など、世界的な経営学者たちが監修し、マネジメントに関する理論、設問、演習が掲載されているテキスト。
マネジャーが相互に経験を共有するだけでなく、良質なコンテンツがあることで、活発な議論を生み出し、「マネジメントの理論」と「現場での実践」を結びつけるというわけだ。