内省型リーダーシップ 第6回 内省型フォロワーシップ
前回までお読みいただいた読者の中には「自分の上司にも内省型リーダーシップを学んでほしい!」と思われた方もいるかと思います。そう思っていただいたことは嬉しいのですが、内省が必要なのはリーダーだけではありません。フォロワーにも内省は有効な行動様式なのです!リーダーがどんなに優れていても、実際にはリーダー以外の人々(フォロワー)が動かなければ何も達成できません。今回は理想のフォロワー像を提示します。
内省はリーダーにだけ必要なのではない!
前回まで内省がリーダーシップに有効であることを述べてきた。筆者はメンタルモデルや自己定義の再構築といった自己変革こそが組織を変えていくことを強調してきたつもりである。共感していただいた読者の中には、「自分の上司も内省型リーダーシップを知ってくれたらなぁ」と思った方もいるだろう。大変ありがたいことながら、少しその考えを保留してほしい。「上司(または社長)に変わってほしい」という考えの底にはどのような世界観が横たわっているのだろうか?内省型フォロワーシップとは、フォロワーであることを積極的に選択し、全体最適を考えながら主体的に考え、実行するというフォロワーが有すべき自己定義である。本稿ではフォロワーのための内省についてご説明する。いずれはリーダーになりたい方はもちろん、リーダーになりたくなくても仕事を充実させたいと思っている方には是非読んでいただきたい。
組織を変えるのはフォロワーだ!
リーダーとは、自らのビジョンを信じ、前人未到の沼地を渡り、現状を大きく変える人である(『リーダーシップの旅』野田智義+金井壽宏/著、光文社/刊)。そのためリーダーはいつの時代でも脚光を浴びるが、フォロワーがいなければリーダーは存在しえない。起業家であるデレク・シヴァーズ氏が「社会運動はどうやって起こすか」についての講演で興味深い映像を提示しながら、フォロワーの大切さを解説している(www.ted.com/talks/lang/jpn/derek_sivers_how_to_start_a_movement.html)。ある野外コンサート会場で、ある男が大変ユニークなダンスを始める。しばらくの間、周囲の人は茫然と見ていただけであったが、数人が一緒に踊り出し、次から次へと一緒に踊る人が増え、遂には数百人が一緒に踊るというものだ。デレク氏も強調しているが、興味深いのはフォロワーがいなければ、最初にユニークな踊りを踊り出した男はただ1人で踊るだけで終わり、ムーブメントは起こらなかったということだ。リーダーが偉く、フォロワーが取るに足りない存在というわけではないことをここでは強調したい。フォロワーが存在してこそ、リーダーが存在できる。自分がリーダーを引き受けた時こそ実感ができるだろう。かけ声をかけても一緒にやってくれる人がいなければ何もできないのだ。またリーダーとフォロワーは役割であって固定的な身分のようなものではない。近年では、部署横断のタスクフォースのような取り組みがなされることが多いが、そこでは部長がメンバーで課長がリーダーであるというように、役職が逆転することもありうる。その時に、部長が「課長の指示には従えない」と上司面を決め込むことがある。これではリーダーである課長はやりにくくてたまらない。筆者は、リーダーとはあくまでも役割であり、あるシーンではリーダーである人も別のシーンではフォロワーとなることが往々にしてあると考えている。そのため本稿は現在リーダーの立場にある方にも、フォロワーの立場になった時には参考にしていただきたいと思っている。「フォロワーなんて簡単だ!」と思っているならなおさらである。