第11回 社員500人がボランティアで被災地を支援 炊き出しを通して知る“食の原点” 内田 智氏 すかいらーくグループ 総合企画室 他|中原 淳氏 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
甚大な被害をもたらした東日本大震災。被災地支援は義捐金の寄付に留まらず、被災地へ社員ボランティアを送り込んでいる企業も多い。社員によるボランティア活動は、企業、そして社員にどんな学びを残すのだろうか。すかいらーくグループによる被災地での社員ボランティアの現場を訪ねた。
避難所で安全な食を
「豆腐ハンバーグです。あんをかけてくださいね」「今日は汁物はないので、お椀はいりませんよ」東日本大震災により甚大な津波被害を受けた宮城県気仙沼市。猛暑の続く7月中旬、市内最大の避難所となっている気仙沼市総合体育館で、お盆を手に集まってきた被災者の方々に声をかけながら、おかずを盛り付けているのは、ガストやバーミヤンなど外食チェーンを展開するすかいらーくグループの現役社員たちです。被災者の方々が寝泊まりをする体育館の入口付近の一角に並べられたこの日の献立は「ごはん、豆腐ハンバーグみぞれあん、鮭の塩焼き、カットレタスのサラダ、なすの揚げ浸し、筍土佐煮、松葉漬・梅干し・葉唐辛子など漬物5種、デザートのフルーチェ」。バランスもよく、高齢者にも食べやすいメニューです。仮設住宅の建設が進められてはいるものの、震災から4カ月が経った7月中旬の段階で、避難所に暮らす被災者の数は気仙沼市内で2000名以上。総合体育館では、200名以上が避難所生活を送っています。すかいらーくグループが、この避難所で夕食の炊き出しを始めたのは3月21日のこと。4月11日からは女川町総合運動公園の避難所でも、同様の夕食炊き出しを開始。以来、欠かさず社員ボランティアを送りこみ、支援を続けています。市内に系列店舗は1店もない、という気仙沼、女川で、迅速に体制を整え、社員ボランティアによる継続的な支援ができたのはなぜなのでしょうか。まずは、この支援活動が始まった経緯について、総合企画室の内田智氏にお話を伺いました。
原点である食で社会貢献を
3月11日、内田氏は、仙台工場での生産物流体制の見直し中に、震災に遭遇。幸いなことに、大衡村にある仙台工場の被害は軽微だったうえに、コジェネシステム(自家発電)等を備えていたことで、インフラも確保でき、直後から生産、物流体制に問題はありませんでした。内田氏らは、工場内に緊急対策本部を設置。最初の1週間は、大衡村で炊き出しを行いました。