変化とともにあるための易経 第4回 混沌の時代を生き抜くため 企業が備えるべき不易流行
大自然の教えに耳を傾け変化の意味を知る
本連載では、易経や陰陽五行の底流にある「統体」「相生・相克」「循環」「時」などの思想について説明してきた。今回は、易経の本題である「変化」を取り上げてみたい。混沌の時代を生き抜くために企業の経営者や社員がなすべきことは、何か。私は、これまで社内に蓄積してきた「知」を大切にしながら、同時に新たな知を社外から獲得することだと考えている。今の時代に必要なのは、自らを柔軟に変化させることなのである。そのためには米国流の経営だけでなく、易経や陰陽五行など、東洋の知を理解し、大いに役立てたい。中でも易経を貫く「変化」の思想を理解すれば、より多面的な発想力を持つことができるだろう。さて、易経における変化の思想を述べる前に「大自然の教え」に触れておきたい。なお、「自然」という言葉には、感覚的経験で知り得る形ある自然(形而下)と、有形の現象の奥にある感覚的経験では知りえない自然(形而上)の2つの意味があるが、ここでいう「大自然」とは、その2つの自然をあわせ含むものと理解していただきたい。なぜ、大自然の教えなのか。人間は言うまでもなく、大自然の一部である。人工的な物質に囲まれて暮らしていると、その事実を忘れがちだ。だが、今年3月に発生した東日本大震災によって、私たちが大自然とともにある極めて小さな存在だということを誰もが痛感したのではないだろうか。人間が大自然の一部であるなら、人間の集まりである企業もまた、大自然の一部ということになる。そうであるなら、大自然の掟や法に則って生きるべきではないか。その掟や法に反した発展はないのではないか。裏を返せば、大自然の中に潜む知を学び取ることで、今の時代を生き抜くヒントを得ることができるはずだ、と考えている。易経は、中国の自然観・自然哲学を集約して法則化した書であり、いわば大自然に学ぶ方法論である。大自然の教えに耳を傾けることは、易経における変化の思想の土台を学ぶことに他ならない。
変化こそが物事の本質だから変化に逆らわない
そもそもこの地球上に生命が誕生したのが今からおよそ35、6億年前のことだといわれている。それ以来、地球はさまざまな環境の変化にさらされてきた。緑豊かな時代、氷河で冷えきった時代、乾ききった砂漠の時代というように、ダイナミックな環境の変化が繰り返し起こる中で、生き物たちはそのときどきの環境に自らの生き方を合わせ、姿を変えることで生き延びてきたのである。