企業事例4 本人・上司・人事が気づき成長する 昇格時のアセスメント
昇進・昇格の際に活用されることが多いアセスメントセンター法。しかし、その結果を単に人事データとしてとどめてしまっては単なる評価指標というだけで終わってしまう。ローソンでは、アセスメント結果を人事・本人・上司の三者がそれぞれ検討、分析し、それぞれの気づきとその後の学びへと結びつけている。将来的にはアセスメント結果をベースに、個人の力を最大限に活かすタレント・マネジメントを実現したいという同社。その取り組みを取材した。
昇格審査の客観性を高めるアセスメント
ローソンの店舗運営の特徴は、地域の顧客ニーズを踏まえた店づくりにある。同社ではこれを実現するため、ここ約10年で数々の改革を実行してきた。2003年より採用している支社制もその一環であり、全国7つの支社に対し一定の決裁権を与え、地域の特色、顧客ニーズに合わせた店舗開発・運営を促進している。人材登用においても同様で、一般職からマネジャー職への昇格に当たっては、支社がそのポストに適切だと考える人材を推薦し、人事と候補者の部門長で面談を行い判断する方法で昇格審査を実施してきた。ところがこの内部評価だけでは、判断基準が明確ではない、公平性に欠けるといった問題が生じてしまっていたという。そこで2010年から導入したのが、管理職としての適性を判断するアセスメント手法、アセスメントセンターである。同社の人事管理マネジャー山上賢一氏は、導入の目的を次のように説明する。「1つめの目的は、評価の客観性を高めることです。上司や人事による内部評価は、どうしても本人と普段接する中で受ける印象が影響してしまう。そこで外部評価を入れることで“世間との目線合わせ”をすべきだと考えました。我々内部の視点からでは見えない点を客観的評価によって明らかにするために、また世間一般の水準から見て、候補者がマネジメントレベルに達しているかを公正に判断するために、アセスメントという外部評価が必要不可欠だと考えたのです」(山上氏、以下同)
事業戦略に沿った人材登用に向けて
アセスメント導入の背景にはもう1点、定期的なアセスメントでマネジャーとしての一定水準を満たした人材をプールし、そこから課長職・部長職に就く人材を登用したいという狙いがある。「実は従来の昇格制度は、基本的にポストありきでした。そのため、候補者は『ポストが空くからそろそろ彼・彼女はどうだろう』といって現場から推薦されてきます。その場合確かに経験や普段の仕事ぶりは良かったとしても、マネジャーとしてのスキルについては十分に評価しきれないというのが実態だったのです」そこでアセスメントによる評価項目に基づいて、マネジャーとしての要件を満たす人材をある程度プールすることができれば、ポストありきではなく、より戦略的な人材配置――すなわち、個人の特性を活かしたタレント・マネジメントが可能になるというのが同社の考えである。「たとえば事業戦略上“マネジメントができる人材”が求められている場合、現場実績だけでは根拠として説得力に欠けます。ですが、アセスメント結果があれば、プール人材の中から、強み・弱み、潜在能力やスキルを事業のどこにどう活かせるのかを、誰の目から見ても明らかな形で示し登用できると考えます」