Special Interview 齋藤孝の“読む力”
ここからは、いよいよ「読む力」について見ていく。
『三色ボールペンで読む日本語』『読書力』などの著者であり、“読書の達人”である齋藤孝氏は、読者が「読む力」の基本であると言う。
そこで、まず齋藤氏に読書の効用と 「読書力」を高める方法を聞く。
文脈をつかむことがコミュニケーションのカギ
「読む力」を高める最良の方法が読書であることは、改めていうまでもない。ここでは読書によってもたらされる「読書力」を軸に、読書の重要性を再確認するとともに、より効果的な読書法を紹介していきたい。
読書力にはさまざまな能力が含まれるが、社会人が読書力を向上させることで得られる力のうち、とりわけ重要なのは次の2つだ。
1つめは、文章や人の話を要約する力である。書き言葉には、漢熟語のように意味が凝縮された言葉が多い。読書によってこのような語彙を増やすことで、短い言葉で人の話や文章の骨子を的確にまとめる力が向上する。たとえば1分間程度のスピーチでも、「えーと…」「~みたいな」といった無駄な言葉が多く、要領を得ない話し方をする人は多い。このような人は話す力が足りないのではなく、要約する力が足りないのだ。
読書によって得られる2つめの力は、話の文脈をつかむ力である。本は文脈の集積である。そのため本を読んで文章の意味を追っていくことは、人の話の流れをつかむ訓練にもなる。
人の話の流れをつかむことがうまい人は、たとえば部下が支離滅裂に話していても、本人がいわんとすることを理解し、整理してあげることもできる。あるいは会議等の場で、話し合いの流れを押さえ、板書するのも容易だ。
要点を押さえて話したり、相手の話の流れをつかむことは、一見読書とは無関係であり、むしろコミュニケーションの問題のように思える。しかし根底にあるのは、いずれも要約する力と文脈を押さえる力である。そのためこれらのコミュニケーションに問題のある人は、コミュニケーションに関する訓練をするより、読書量を増やすことのほうが効果的なのだ。