連載 酒井穣のちょっぴり経営学 最終回 未来を予測できない時代の戦略論の基礎 ②
これまで17回にわたり、「経営学」のイロハを紹介してきた。それは、新しい人事に求められているのは、ヒトに関する知識以上に、経営に関する知識だからだ。今回は、具体的に会社の戦略をどう考えていけばいいのか、そして、会社の戦略と、人事が果たすべき役割の関係について述べ、連載の結びとしたい。
集めるべき情報と分析の肝
前回考えた通り、戦略とは現在地(現状)と目的地(あるべき姿)を結ぶルートのことです。そして、現在地に関する情報を集めて分析することは、未来の不確実性を下げることであり、後に続く目的地の設定と戦略の立案をできる限りスムーズなもの(簡単なもの)にするためでした。
では、ビジネスの文脈においては、具体的にどんな情報を集めて分析すれば、現在地が明確になるのでしょうか。まずは図表1を見てください。「自社にできること」と「顧客が求めること」の重なる部分が、自社がビジネスを展開できる「スポット」。中でも特に「競合にできること」と重ならないスポットこそが、「スイート・スポット」になります。
スイート・スポットには、顧客に対して、自社にしか提供できない価値が含まれています。いってみれば、ここはある種の“独占状態”を示すエリア。そして、自社のスイート・スポットを考える直感的な方法は、「自分の会社がなくなった場合、困るのは誰で、それはなぜか」という質問に答えることです。
ちなみにビジネスの戦略ではなくて、個人のキャリアの戦略を考える時でも、スイート・スポットを意識すべきなのは全く同じです。世界(顧客)に対して、いかにして自分にしか提供できない価値(エッジ)を提案して行くかが問われるのですから。
戦略立案における3つの論点
明らかになれば、後に続く議論は──#REF!
1 現在のスイート・スポットをいかに有効活用するか(攻める戦略)