Opinion Column 1 氣を通わせ相手を尊重し導く心身統一合氣道の極意
相手の“氣”を尊重することにより、人を導き投げる合氣道。その考え方とプロセスは、人を教え導くためのヒントに溢れている。心身統一合氣道の継承者が語る、教え、学ぶための極意とは。
「氣の原理」に基づき相手を導いていく
心身統一合氣道は、「心が身体を動かす」という氣の原理に基づいて、相手の氣を尊重し導くことを学ぶ武道である。その土台には、人と人とがかかわりながら相手を導いていくという点において、誰かを「教える」立場になった時のあり方にも相通じるものがある。
合氣道の技においても、後進の指導においても、私たちが第一に考えるのは相手と“氣”が通っていることだ。“氣”は誰もが持っているものであり、人間の生命力の根幹である。お互いの氣も常に交流しており、氣が通っている状態こそ、コミュニケーションの基本といえる。
何かを人に伝える時に、相手が「理解している」あるいは「理解していない」ことを、相手の雰囲気で感じ取ることがある。これは「理解している」時は自信のある氣を、「理解」していない時は不安のある氣を相手は発しているからである。氣が交流していれば、相手の発している氣を感じ取ることができ、相手を理解する大きな助けとなる。
合氣道においては、相手の氣の動きがわからなければ技にならない。身体が動く前には必ず氣が動いている。相手の氣を感じ取るからこそ、瞬時に対応することができる。
こちらが何かを伝えたら、相手が理解しているか、相手が発している氣を注意深く見なければならない。そして理解していないと感じたなら、繰り返し伝える。もしくは、違う角度から伝える。結果を残す指導者は、必ず相手の状態をよく見ている。「この前教えたのに、なぜ理解していない?」と、相手を責めているようでは、指導者とは到底いえないだろう。
力ずくで動かそうとすれば相手は反発する
相手の氣を尊重して指導すると、人は成長する。反対に、相手の氣を無視して、自分の思い通りに動かそうとすると、大抵は失敗する。「自分の思い通りに使おう」「利用してやろう」などという自己中心的な心を持っていると、その氣が相手に伝わって反発を招くからだ。
人を動かすのは“力”だけではない。合氣道において、力ずくで相手を投げようとすれば相手は抵抗する。それでは自分より力の強い相手には全く通用しない。相手を投げたければ、まず相手のことをよく理解する必要がある。相手の氣の動きを感じ取り、それを尊重することで相手を投げることができる。
このプロセスは、人とのかかわりによく似ている。相手を無理に動かそうとすれば相手の心は抵抗する。自分の力が強ければ無理に動かすことができるかもしれないが、相手が嫌々動いているのでは、それも長続きはしない。
相手が自分より強ければ、そもそも動かすこと自体ができない。相手の状態を正しく把握し、相手が望むものを理解すれば、相手を導き動かすことができる。