ID designer Yoshikoが行く 第52回 西アフリカの将来を握る ガーナ人講師たちの熱意
西の“黄金の国”
ガーナといえば、金とダイヤモンド、上質なカカオ豆に、お肌しっとりシアバターの産地として有名な、女性にはこの上なく魅力的な国である。そのガーナの国家公務員研修センターの講師を依頼され、思わずダイヤじゃなくてチョコに目がくらみ、うなずいてしまった私。しかしよく聞くと今回は、テレビ会議システムを使った遠隔ワークショップとか。「あらま!それじゃ、ダイヤを間近に見ることも、極上カカオを楽しむチャンスもないのね?」とちょっとガッカリしたが、東の(かつての)黄金の国ジパングと、西の(ほんとの)黄金の国ガーナをネットワークで結ぶワークショップって、ゴージャスな感じでいいかも~、と軽いノリで引き受けてしまった。引き受けたはいいが、資料を読み始め、ハタと考えこんでしまった。というのも、今回は単なるインストラクショナルデザインの研修ではない。西アフリカ地域のCenter of Excellence(人材育成の拠点)をめざすガーナが、3年がかりで取り組む大プロジェクトの総仕上げに当たるもので、「倫理的リーダーシップ」「生産性向上」といった教育プログラムを完成させ、周辺国での研修を実施する高度なスキルを持つ講師を育てる、というのが目標。その先には、人材育成を通じ、西アフリカ諸国の協力と発展をめざすという大きなゴールもある。でも、ガーナ人としゃべったことも、ガーナに行ったこともないのに、できるのか、私?しかし躊躇している時間はない。プロジェクトの報告書、ガーナの公務員研修センターの教育マニュアル、周辺国で実施したTNA(Training Needs Analysis:研修ニーズ分析)のデータ等々、資料の山と格闘すること1週間余り。ようやくうっすらと、本当の課題が浮かび上がってきた。なかでも気になったのは、TNAレポートの「教育以前の課題」の深刻さだ。西アフリカには、内戦終結後10年未満の国もある。行政組織も確立しておらず、公務員の職務定義さえないところもある。