TOPIC 3 ─NIE at Workplace!学習媒体としての新聞─ 新聞から自然と身につく 地球規模の想像力
『NIE』とは、Newspaper In Education、つまり教育に新聞を活用しようという運動のことである。1930年代にアメリカで始まり、日本でも毎年500以上の学校がNIE実践校に指定され、教育現場で新聞を活用している。しかし新聞を使った学習が有効なのは、小中学校の教育現場だけではない。グローバル化を前提とした今のビジネスの場でも、新聞は学習媒体として有益なメディアである。職場教育に新聞を──新聞から企業人が学べる知識や価値観、そしてその学習方法について、朝日新聞社 教育事業センター長の坂本 弘子 氏が語る。
不明確な情報の危うさ
かつて新聞は一家に必ず一紙はあり、家族がさまざまに活用していた、いわば1つの“インフラ”だった。しかし、少子高齢化の進行による人口減少やインターネットの普及の影響を受けて、国内の新聞の発行部数は大きく減少している。2000年には7189万部だった総発行部数が、2010年には6319万部となり、わずか10年で870万部も落ち込んでいるのだ(新聞協会調べ)。特に若年層の新聞離れが著しく、2010年の文部科学省の調査では、50代の85%が新聞を読んでいるのに対し、20代では47%しか読んでいないことがわかった。本来、若年層こそ新聞を活用して、幅広い知識を学んでいく必要がある。しかし昨今、若いビジネスパーソンは新聞を読まずに、インターネットやTwitterなどから情報を得ることが多い傾向にある。朝日新聞社 教育事業センター長の 坂本 弘子 氏は、こうした情報収集について、便利さを認めながらも、危うさを指摘する。「たとえばSNSの情報は、口コミの手軽さやスピード感があっていいのですが、一方、信頼性が十分に担保されていないケースもあることを認識する必要があるでしょう。また、限られた人の間での情報は関心が偏りやすく、日本全体で考えるとどうなのか、アジアでは、世界全体では……といった大きな視点が欠けてしまいがちです」(坂本氏、以下同)