巻頭インタビュー 私の人材教育論 変化を恐れず世界に伍する人材を輩出するのが私の使命
世界170カ国以上で事業展開するグローバルカンパニー、ヒューレット・パッカード。「その日本法人トップだからこそ、見えてくるものがある」と語るのは、日本HPの小出伸一代表取締役社長執行役員だ。世界から見た、日本のグローバル人材に必要なものとは?新時代の「チーム力」について聞いた。
170カ国公募制度は社外の人もライバル
――貴社は、世界170カ国以上で事業展開されるにあたり、ビジネスプロセスを世界規模で標準化するなど、グローバルレベルでの事業の最適化を追求されています。人事面においても、グローバリズムに基づいた経営が行われていると聞きますが。
小出
当社の従業員数は約5300人と、国内のベンダーの中では、さほど規模の大きいほうではありません。“ジャイアンツ”ではないからこそ、海外のリソースの活用が不可欠になります。そしてHPにとって、多様性は強力なビジネスツール。ですから、米国の本社にしろ、他国の事業所にしろ、エクゼクティブチームの顔ぶれからして米国人ばかりではない。国籍は全くバラバラです。
日本HPの場合も、上司が海外にいる、あるいは部下はアジア各国にいるというケースは多い。部下と上司が電話やWebを通じて、英語で報告や会議をするということはしょっちゅうですね。日本国内で日本人同士集まり、日本のためだけに仕事する、という考え方は捨て去るのが前提です。
最近の若者は内向き志向だといわれますが、当社では新卒、中途採用でもグローバル志向の高い人を集めています。彼らの活躍、キャリアを後押しする制度もいろいろあります。
たとえば、「社内公募制度」。日本に限らず全世界で公募している職種をリアルタイムに閲覧し、チャレンジしたい職種にオンラインで応募できる制度です。日本HPだけでなくシンガポールHPでも、米国HPでも、ポストが空けば国籍を問わず手を挙げることができます。
――やる気と能力があれば、170カ国が活躍のステージとなる。
小出
その通りです。通常、人事異動は会社都合が優先されるもの。ですが当社では、お客様にご迷惑がかからない限り本人の希望を尊重します。一般的なFA制度に比べ、かなり徹底された仕組みだと思います。実際、国内外を問わず、人事異動者の7割が自ら希望して異動しています。
ただ、もちろんそこには競争もある。基本的に募集情報は社内公募欄と同時に、外部向けの人材採用欄にも掲載されます。自分の狙ったポストを獲得するには、社内と社外、両方の競争に勝ち残らなければならないわけです。
――非常に厳しい環境ですね。
小出
そうですね。しかし、自由でフェアな競争こそが会社を健全化し、風通しをよくすると信じています。
キーワードは「変化」。変化を恐れず、常にアンテナを立てて見極めることが、グローバルな働き方には不可欠なのです。
そもそもHPは変化を遂げながら成長を続けてきた会社です。創業以来、M&Aを繰り返しながら、その度に新たな付加価値を獲得し、そのDNAを進化させてきました。その姿勢は、今もこれからも変わりません。
もちろん、その一方で不変のカルチャーもあります。当然ながら、「HPWAY」は、不変のカルチャーです。ベースにあるのは、「顧客からの尊敬と信頼の獲得」「適正な利益」「市場でのリーダーシップ」「成長」「働く人へのコミットメント」「リーダーシップの発揮」「良き市民」の7 項目ですが、どんなに経営環境が厳しくとも、守り続けなければならない理念ばかりです。
そして私たち日本HPにも、外資系企業でありながらずっと保ち続けている日本的な側面があります。他の外資系企業に比べ、人を尊重する傾向が強いと思います。「メイド・イン・トーキョー」をスローガンとして、東京都昭島市に工場も持っています。地域貢献にも熱心です。いずれも尊重すべき文化ですね。
しかし、大切なのは、不変なものを守りながらも、変化に柔軟に対応していくこと。これは、個人においても同じです。