TOPIC 1 ASTD International JAPAN リーダーシップ開発委員会報告 日本人グローバルリーダーは 早期から青図を描いて育成を
去る4月21日、CHO協会・ASTD日本支部共催セミナー、「グローバルでアイデンティティを発揮するために求められるリーダーシップを開発するには?」が開催された(於:東京・パソナ本社1階多目的ホール)。このセミナーでは、ASTD日本支部リーダーシップ開発委員会が研究、考察した、日本企業におけるリーダーシップ開発のあり方や課題について同委員会委員長を務める永弘之氏が、参加者とのディスカッションを交えて語った。本稿では、主に当日の講演から、日本企業が置かれている危機的状況と、グローバルリーダー育成の必要性、そしてその方法についての提言を紹介する。
変化するカントリーマネジャーへの役割期待
「野村證券では、各事業分野におけるトップのポジションの大半は、日本人以外の人材が務めています。実力主義の野村において、日本人が選ばれていない――これはひとつの象徴ではないでしょうか。そしてこのままでは、日本企業がグローバル拠点のトップを日本人に任せることは、難しくなっていくのかもしれません」ASTD JAPANリーダーシップ開発委員会委員長を務める永弘之氏は、こう語り始めた。昨今よく語られるように、日本経済、そして産業のプレゼンスが低下している中、日本企業のグローバル展開のありようは大きく変化してきている。日本企業は、従来の製造拠点や技術をベースとした展開から市場開拓へと、グローバル展開の中心をシフトしてきたのである。当然ながら、ここで重要になるのは、製造に関する知見ではない。海外で現地の市場を開拓するために、現地の人材を活かしながらどのようにマーケットでのプレゼンスを広げていくかが重要になってくる。そしてこの変化は、各企業におけるカントリーマネジャー(1カ国以上の海外事業所を統括する現地トップ)クラスへの役割期待の変化に直結しているといってよい。では、求められる期待役割を果たせる人材は、日本企業において育成されてきたのだろうか。永氏によれば、本人の実力によって、その役割を果たしてきたリーダーは確かにいる。しかし、それらの人材は、「必ずしも企業によって意図的、計画的に育てられてきてはいない」と指摘する。「今の優れた日本人グローバルリーダーたちの能力は、その本人たちが無我夢中で、失敗も含めた体験、“修羅場”を経験する中で、相応の能力を身につけてきたもの。彼らは、企業によって、計画的に育てられたわけではありません。これから日本が海外の市場を開拓していくグローバルリーダーを育てようとしても、その知見がないわけです。これまで通りの日本企業の育て方では、リーダー育成は相当に困難を極めるでしょう」(永氏、以下同)まだ時間が残されているならば、こうした人材を育てるための策を講じなければならない――そこで委員会は、今回「グローバルでアイデンティティを発揮するために求められるリーダーシップを開発する」ことをテーマに据えた。そのうえで、○どういう力を身につければよいか○それはどのような経験を通じて、身につけられるものなのか○それは、どのような仕組みで可能になるのか