覆面座談会ベテラン中堅のホンネ ベテラン中堅社員こそ組織を変えるドライバー
若手と管理職の間に位置し、仕事では最前線を張る「ベテラン中堅層」。彼らはいかに仕事のモチベーションを見出し、会社に対してどのようなことを考えているのか。業種も経験も異なる3人のベテラン中堅の“ホンネ”から浮かび上がってきたのは、自ら役割を認識し、自らやりがいを生み出しながら、現場第一線で励む姿だった。
大震災で再認識した自分の仕事の意味
―普段皆さんは何にモチベーションを感じて仕事をしていますか?
A氏
3月11日の東日本大震災発生以降、何にやりがいを感じるか、つまり“成果”の捉え方が変わってきているように感じます。震災の時に、ある高層ホテルに入れている自社製品のエレベーターが止まってしまって、夜中に復旧したのですが、その時、宿泊客の方から拍手が上がったんです。その光景を見て感動した。普段当たり前に思っていた仕事が、こんなにも必要とされているんだと、疲れも一気に吹っ飛びました。改めて仕事への誇りを感じました。
B氏
私も震災前は、売上向上にやりがいを感じるというか、営業的な感覚が強かった。でも震災後、当社の運営する店舗に十分な商品があるという「当たり前」を維持し、生活している方に必要な物資を妥当な価格で届けるということが私たちの使命なんだと強く意識しました。―会社だから、市場で勝つことは大前提。でもそれ以外の社会的な役割があったのだと震災で改めて気づいたということですね。
A氏
当社はインフラにかかわる業種なので、目に見える成果は突出しにくいと思います。でも震災が起きて、「当たり前」を保つことがいかに難しいのかとつくづく感じました。日常業務こそ、もっと成果として認められるべきなのではないかと感じています。
B氏
震災は、普段意識していなかった他部署や協力会社さんとのつながりを再認識する機会でもありました。一心同体になってライフラインを支えているという実感が強まった。全然関係ないと思っていた人と、共通の目標に向かって動いている感覚は、モチベーションになりますね。
C氏
私の場合、営業としてチームではなく個人で動くことのほうが多いですが、だからこそスタッフや関係者とネットワークをつくることが肝心。人や情報をうまく“使う”方法を自分で考えて、仕事を動かす時が快感です。だから後輩にも、関係者にはメールではなくてできるだけ足を運んで顔を出してこいといっています。特に相手が年配の上司だと、立ち話を1分するだけでも仕事の流れが変わることがありますから。
―部下指導の機会は多いですか?
C氏
そうですね。先日、初めて昇格試験を受けて「主任」という肩書がついて、教える機会は多少増えたという印象を持っています。
ただ、昇格以前から自分は後輩にはいろいろ教えてやりたいと思って接してきました。教えるというと偉そうですけど、積極的に話しかけてコミュニケーションをとる。教えることで自分が気づくこともありますし、将来的には、後輩とのネットワークが自分の仕事に活きるはず。打算的にやっているわけではないですけど、後輩指導も自分の役割だと思っています。―地震が起きた時には、社会に役立ちたいと思う。後輩ができれば指導する。こうしたそれぞれの役割認識から生じるモチベーションは大切ですね。