Column① 生き生き働く社員と元気をなくす社員の違い ― ベテラン中堅社員のキモチ ―
後輩を指導しつつ、自分の仕事を抱え、管理職の上司を支えながら毎日の仕事に励む「ベテラン中堅社員」。結婚、出産、育児、親の介護といったライフイベントが多い世代でもある。ベテラン中堅社員を取り巻く状況や悩みについて、企業・組織内で彼らの多くをカウンセリングしてきたメンタルヘルスの専門家、産業医の
ベテラン中堅の働きぶりを左右する「SOC」
「ベテラン中堅」といわれる30代後半から40代前半の世代の特徴を一言で表すと、非常に個人差が激しい世代だということができます。
たとえば若手や新人は、程度の差はあれど皆それなりにやる気がある。しかしベテラン中堅世代ともなると、生き生きと仕事をしている人とそうでない人の差が激しいのです。
ベテラン中堅は、仕事を任されることも多く、その分責任も増えます。後輩を指導する傍ら、自分の仕事を抱え、さらに部下として立ち回ることも求められます。それゆえにプレッシャーも大きく、メンタル不全(心の病)になってしまう人も少なくありません。「管理職にはなりたくない」「仕事量が多すぎる」……こういった声を聞くことも多々あります。
その一方で、どんなに仕事が多くても、生き生き働いているベテラン中堅社員もいます。彼らにとっては次々と責任ある仕事を任されることが、むしろやりがいなのです。
この差はいったいどこにあるのでしょうか? それには、「SOC(senseof coherence:首尾一貫感覚)」と呼ばれる能力が関係しています。
SOCは、ユダヤ系アメリカ人の医療社会学者、A・アントノフスキーが提唱した概念です。彼は、ナチスのユダヤ人強制収容所に収容された人々の追跡健康調査を行い、多くの収容経験者は長生きできなかったのに、約3割の人が心身ともに健康で長生きしたという事実を明らかにしました。