Column① 生き生き働く社員と元気をなくす社員の違い ― ベテラン中堅社員のキモチ ―
キャリア発達が主観的または客観的に停滞してしまう現象を「キャリア・プラトー現象」という。青山学院大学経営学部の山本寛教授は、長年にわたりこの現象と昇進の関係や、労働者のワークコミットメント、労働観などについて研究し、多くの実績を残している。ベテラン中堅社員の中には、ポスト不足やその他の理由で、組織から承認されている感覚が持てず、モチベーションを低下させプラトー状態に陥る人もいる。そこで、そもそもこの層が置かれた状況の整理と、彼・彼女らをモチベートする方法を聞いた。
ベテラン中堅とはどのような時期なのか
まず初めに、アメリカの発達心理学者、ダニエル・レビンソンの著書『人生の四季』* を参考に、この特集のターゲットである“30代後半から40代前半の社員”の企業内での立場や状況、そして彼らが人生においてどのような時期にあるのかについて考えてみたい。
レビンソンは、40代の男性40人の個人史を丹念に面接調査し、人の発達を
「児童期と青年期(~22歳)」
「成人前期(17~45歳)」
「中年期(40~65歳)」
「老年期(60歳~)」
の4つに大別した。各段階の境目には5年間の“過渡期”が設定されており、さらに細かい分類を見ると、33~40歳は「一家を構える時期」、40~45歳は「人生半ばの過渡期」と位置づけられている。そこで、この“ベテラン中堅”に関する考察も、30代後半と40代前半の2つに分けて行うことにする。
●30代後半の現況
レビンソン曰く「一家を構える時期」――自分の生活構造の中心である仕事や家庭に全力を注ぎ、若い頃から抱いていた野心や目標の達成を一直線にめざす年代。早い話が働き盛りであり、“向上”や“階段を昇っている様子”をイメージさせる。
“プレイヤー”としての独り立ちは、多くの人がすでに30代半ばまでに果たしているが、本当の意味で独立して自分の仕事ができるようになるのはこの時期だろう。自分が所属する部署あるいは仕事の領域に、しっかりと“錨(いかり)”を下ろして仕事の能力をさらに伸ばし、周囲から高い評価を得ていくことが、この年代にとって最大のテーマであると私は考える。
この時期ならではの課題は2つある。1つには、これまでの仕事の経験も踏まえ、これから先その部署や会社で、自分が何をしていくかということが明確にわかってこないといけないということ。2つめは、高レベルにある仕事の能力を、どこへどのように使っていくのかを明確にすべきであること。たとえば過去に自分がめざしていた方面に活かすのか、会社から求められている短期的な課題を集中的に解決するために使うのか……といったことをはっきり認識する必要がある。