論壇① ~フォロワーシップの「組織効果×5」「個人効果×5」~ 若手・中堅社員のフォロワーシップの開発が組織のチームワーク強化のカギ
リーダーシップの対の概念となるフォロワーシップ。偉業を成し遂げた優れたリーダーの影には、必ずその他大勢の優れたフォロワーの存在がある。リーダーシップを際立たせる優れたフォロワーシップとは何か。フォロワーシップのタイプに応じた強化のポイントを紹介する。
フォロワーシップとは主体的な働きかけ
現在、上場企業においては課長職のほぼオールプレイングマネジャー化が起きている。日本能率協会の調査では、1985年には個人の業績目標を持っている課長の割合は20%に満たなかったが、2000年には90%に上昇した。
結果を厳しく査定される成果主義では、どうしても実務遂行に力を注いでしまうため、現代の課長職の多くが部下育成や職場のチームマネジメントができない状況に追い込まれているのが現状だ。
そこで育成の視点と目的を、組織力開発・チームワーク強化として捉えた場合に、育成対象に浮かんでくるのが、フォロワーとしての若手・中堅社員である。
フォロワーシップとは、フォロワーが「組織成長のキーマンは自分たちである」という当事者意識を持って、リーダーを支持・支援しながら組織パフォーマンスを高めることだ(図表1)。
日本におけるフォロワーシップの第一人者であり、現在多くの企業の研修講師として活躍されている吉田典生氏曰く、「この10数年で日本の会社組織の姿は大きく変わった。リーダーだけの力では成果は上がらない。組織(チーム)づくりは、フォロワーの力をどう発揮させるかにかかっている」。
世の中の人事研修担当者には、「若手・中堅社員は、担当職務でリーダーシップを発揮することが優先である」、「ただでさえ上司の指示通りに動いてしまう若手・中堅社員が、フォロワーシップと聞くと、さらに受け身になりはしないか」と危惧する人もいるかもしれない。
しかし、本当の意味での「フォロワーシップ」とは、「上司に対して主体的に働きかけること」「チームのために当事者として貢献すること」を期待するものなのである。
フォロワーシップの機能とは?
フォロワーシップは図表2のようにリーダーシップに作用して、相乗効果を発揮する。
たとえば、「方向」という領域でのリーダーシップは「ビジョンを示す」のに対して、フォロワーシップでは「翻訳して具体化する」ことになる。要するに、組織の目的や方針が示されたらブレークダウンして実現可能な施策や計画に落とし込む、ということだ。
また、リーダーシップでの「決定する」は、フォロワーシップでは「提言(健全な批判)をする」ことである。米国での定義は、「批判する」だが、日本の組織では、もっと柔軟に「提言する」とか、「健全な批判をする」=「自分なりの代替案を示す」という考え方がフィットするだろう。
以上のように、フォロワーシップとは、目的を共有するチームとして機能するための、フォロワー側からの主体的な働きかけのことなのだ。
フォロワーシップには、チームにとっての「組織的効果」と、フォロワー自身にとっての「個人的効果」の2つの側面がある。