Reporting Global HRD of the United States 米国グローバル人材育成の今
グローバル環境が世界中で当然となる中、新興国市場の発展を見据えた組織づくりや、人材のグローバル化が先行している米国において取材を行った。グローバル人材とはどんな人材であり、どのように育成できると米国では考えられているのだろうか。
Report1~リーダーシップに関する研究・教育の先端機関~Center for Creative Leadership(CCL)
リーダーシップに関する調査・教育機関として、アメリカ(2ヶ所)、ヨーロッパ、アジアに研究所・研修施設を置き、企業・団体から高い評価を受けているセンター・フォー・クリエイティブ・リーダーシップ。長年、グローバルリーダーの研究を進めてきた同機関の専門家が考える、リーダー(経営幹部・管理者)が着目すべき能力開発の視点とは。
リーダーシップ研究の世界的権威、センター・フォー・クリエイティブ・リーダーシップ(CCL)。世界各国に研究の範囲を広げ、グローバルに活躍するリーダー(経営幹部・管理者)についても長年研究を重ねてきた。
「国境を越えて、多様な人材の力を引き出し、グローバル環境下で活躍できる人材」に求められる要件とは何か。同研究機関の専任研究員(組織心理学者)及びトレーナーに、リーダーが着目すべき能力開発のポイントについて聞いた。
グローバルリーダーに求められる感情知能(EQ)
「グローバルな環境で効果的なリーダーシップを発揮できる人は、文化に敏感で、状況に合わせた行動ができます。良いリーダーとは、頭の良さではなく、迅速に変化でき、俊敏さがある人。ずば抜けて頭が良くなくても良いリーダーはたくさんいます」というのは、同社で「ワールド・リーダーシップ調査」を行っているディビッド・アルトマン氏(調査・商品開発部門担当副社長)だ。
この調査は15言語で実施され、すでに世界中から1万人のデータを保有。各国で活躍するリーダーの特性を研究する中で、リーダーシップをとれる人は世界的に普遍的な特性(例えば正直さ、など)と、国特有の特性を持つことがわかったという。
そして優秀なリーダーほど、各国間、企業間、組織間の文化に敏感で、感情知能(EQ)が備わっていると強調する。「グローバル環境下で影響を発揮できる人材とは、自己理解ができ、自分の感情をコントロールでき、他者との関係性を繊細にマネジメントできる人ではないでしょうか」(アルトマン氏)
グローバル人材は早期育成がカギ
EQの重要性はわかるものの、果たしてどのような教育でこれを育むことができるのか。「20 代の時から、ダイバーシティな環境で外国語に触れ、さまざまな挑戦的課題への取り組みや経験をさせ、多くのメンターにつくことの重要性」をアルトマン氏は示唆する。
グローバル・マネジャー研究に長年従事してきたジェニファー・ディール氏(シニア・リサーチャー)も同じ考えだ。「グローバル環境下でマネジャーとしての力を身につけるには、早い時期が良いということがわかってきました。特に、文化への適応力を高めるには若い時期から取り組む必要があります。他の考え方に目を向け、オープンマインドで、継続して学習する姿勢が身につけば、自分の態度を調整することも可能となるからです」
CCLでは、これまでも「経験から学ぶ力」の重要性を提唱してきたが、調査結果を蓄積する中で、環境変化に対応できる人材となるためには、常に謙虚に自分の行動を振り返り続ける「学ぶ力」を早期に習得することが重要となると改めて確信したのである。
境界に橋を渡すリーダーになる
「リーダーとなる人材はさまざまな境界を認識し、乗り越えていく必要があります。特に最近は、グローバル経営が進み、境界をいかに乗り越えるかということに関心が高まっています」と語るのは、同機関で経営幹部のシミュレーションを活用したグローバル・リーダー研修「ルッキンググラス・エクスペリエンス」のトレーナーを担当する、アル・カラルコ氏とハロルド・シャーラット氏だ。
世界がフラット化し、情報の流れ方が変わったことにより組織が複雑に分散し、社員間の関係にも分断が生じていることに、企業は危機意識を感じている。協調関係が難しくなり、連携できなかったり、同僚や部下との間にカベをつくってしまうなどの状況が散見されてきているというのだ。
そこでCCLでは、リーダーが「組織に働きかけ境界を乗り越えることの重要性」(組織開発)を感じ、「バウンダリースパニング」の考え方を研修に組み込んだのである。