企業事例2 資生堂 世界中の人の力を活かす制度と「資生堂Way」
資生堂は2008年に、10年後にめざす姿として「日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレイヤー」を掲げた。その目標達成のために、創業以来初めて、外部から人事部門トップへの人材登用に踏み切る。すでに世界89の国や地域に拠点を抱え、海外売上比率44.3%にもなる資生堂。グローバル先進企業ともいえる同社の戦略を紹介する。
初めて人事トップに外部人材を招く
資生堂は今年で創業140周年を迎える。その資生堂が極めて異例の人事を行った。外部から人事部門のトップを2011年4月に迎えたのだ。人事部長として迎えられたのは、日立製作所に15年、GEに9年勤務、その後はHPで人事手腕を発揮した大月重人氏。人事のスペシャリストである。同社がめざすグローバルでのタレントマネジメントの実施、および世界共通の人事制度構築への本気度がうかがえる。
資生堂は2008年、「10年後に輝く資生堂の姿とこれに向けてのロードマップ」を策定。その中で10年後にめざす姿を「日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレイヤー」とし、グローバル化推進を宣言した。
そして10 年間を3つのフェーズに分けた経営計画を策定。第1フェーズとなる前3カ年(2008年~ 2010年度)では「全ての活動の質を高める」ことをテーマに、グローバルで通用する強いブランドづくりや質の高い経営基盤の確立に取り組んだ。
大月氏が入社した2011年度は、第2フェーズである新3カ年計画の始まりの年だ。「成長軌道に乗る」をテーマに、順調に進んだグローバル化の加速が最優先で求められていた。特に近い将来、世界最大市場となるアジアでのシェア拡大のためにもスピード感は重要だった。
大月氏が最も重要なミッションと考えたのは、「人事諸施策のブラッシュアップ」と「グローバル人事戦略」の2点。これを受けすぐに人事部門のミッションステートメントとこれからの“ありたい姿”をつくった。それが「人材の最有効活用と組織の最適化を通して、事業に貢献する」だ。「人事にとって大切なのは、事業貢献。これから私たちがめざす姿は“人材マネジメント手法を駆使しながら事業に寄与する、モノをいうビジネスパートナー”であることを示しました」
資生堂グループの従業員数は約4万6000人。そのうち海外は2万人。海外売上の比率も44.3%と高く、すでに世界規模の企業といえる。そこまで大きくなった今、世界中の社員がひとつにまとまり、企業としてさらなる成長をめざすには、グループ共通の使命、価値観を共有し、進むべき方向を合わせていくことが不可欠だった。そこで2011年3月にはこれまでの企業理念を再構築し、「Our Mission, Valuesand Way(MVW)」がアナウンスされた。
Our Missionは、「資生堂グループは何をもって世の中の役に立っていくのか」という企業使命と事業領域を定めたもので、グループの根幹をなす普遍の存在意義を表す。