Opinion 2 地球規模で考え、行動するグローバル企業とは
宇宙から地球を見れば、国の違いや、人種、男女などの差は、些細なことである。グローバル経営とはそうした視点を持って企業活動を行っていくことだと八木氏は語る。それでは、地球規模で考えた時、勝てる企業は何をしているのか?そして、人材開発部ができるサポートとは何か?日本企業と外資系企業で実務家として活躍してきた八木氏に聞いた。
国にかかわらず、自社の“あるべき姿”を言語化する
企業のグローバル展開について考える時、多くの人が“グローバル”を特別視し過ぎているように感じる。グローバル化の本質は地域的なエクスパンション(拡大)。国境をないものとして地球規模で考えていくことだ。たとえば東京から大阪に進出するのと同じような感覚をベースに、自然体で取り組んではどうだろう。
私はこうした考え方を、今春まで勤めていたGEで自然と身につけた。GEは地球規模でのビジネスを実現した会社といっていいだろうが、どこでも成すべき仕事を淡々とこなしていた。それは、「アメリカ国内であろうが海外であろうが、場所が違えばマーケットが違う。その地域でビジネスをして勝つためには、暮らしている人々、必要とされているモノ、適用されているルールなどを調べるのは当然。つまり、どの国でも同じようにやっていけばいい」という考えに基づいている。
そしてGEでは、東京、ニューヨーク、北京、ロンドンなど世界のどこにいても、意見のある人が意見をいい、その中から、優れたものが採用され、会社が動かされていった。
私自身、日本人ということを理由に損も得もしていないことに気づいた時、「グローバルとは、国で区別せずに当たり前のことを当たり前にやっていくことだ」と実感した。
一方、グローバル化を進めている日本企業の方たちと話していると、あくまでも日本を中心に据え、「日本と比べてあの国は……」と考える人が多いことが気になる。
グローバル経営とは、ある1つの国におけるやり方から一度離れ、自社の“あるべき姿”を明確に描き、そこに向かって世界各国で働くメンバーが全員で突き進んでいくことではないだろうか。現在の私であれば、“LIXILのあるべき姿”を描く。そして、それぞれの国について、現実と“あるべき姿”のギャップを捉え、そのギャップを埋めるべく全ての国のLIXIL 社員が尽力できるよう組織をドライブしていく。
チャレンジは、会社の“あるべき姿”を描くことだ。これがはっきり描けていないと「日本のやり方に従え」など曖昧にしか方向性を示せない。それでは他国の人たちを納得させられず、「なぜ、日本のいうことを聞かなければいけないんだ」と反発を招きやすい。これではまとまらない。
世界にはさまざまな考え方の人がおり、黙っていてもわかってくれるということは期待できない。その会社が、何をしようとしているのか、誰もがわかるように言語化し、ストーリーとして語っていくこと。これがグローバル経営にとって重要だ。