連載 金井壽宏の「人勢塾」に学ぶ。試す! 人と組織の元気づくり 第3回 「学びの場」のデザイン 人と組織の元気づくり
成熟社会。正解のないビジネス現場。社内のコミュニケーション不足――これらの課題に、即効性のある薬などないことは、誰もが感じているだろう。この状況に風穴を開ける術は、全くないのだろうか?その問いに挑むのが、神戸大学で金井壽宏先生が主催する第4期「人勢塾」。本誌では、「人勢塾」全10回の授業をレポート。施策1つで問題を解決するのではなく、組織全体へ多様なアプローチをする。そんな「組織開発」の手法を学び、ぜひ現場で試していただきたい。
学びの「場」に焦点を当てる
第3回の焦点は、「教育」。ゲスト講師は、東京大学准教授・中原淳先生。「大人の学びを科学する」をテーマに、組織・企業で働く人々の能力向上や成長の問題を研究する専門家だ。
自身の領域を、「マネジメントラーニング」だという中原先生。「大人の学びを科学する=サイエンス」と、「大人の学びを創り出す=アート」の両側面から研究を重ねている。「今日は特に『アート』の部分についてお話しします。これまで、学びの場や新たな手法を創る社会的実験を繰り返してきましたので、本日はそれをシェアします」
「導管モデル」を超える
「 一方向・一斉講義での学習効果は、どれくらいだと思いますか? 半年後に講義内容を尋ねられた場合、過去の先行研究によると、あらすじを思い出せる人はたったの2%。キーワードだけなら思い出せる人は、29%。残りの70%は何ひとつ記憶に残っていない。学んでいるつもりで学べていないんです」。現在、中原先生をはじめ「学びのデザイン」に関わる研究者が行っているのは、「導管モデル」の克服である。導管モデルとは、知識のある他者から学習者に、一方向で知識を伝達する、という概念。導管モデルで教えたことは、忘れ去られる運命にあるといっても過言ではない。今回は、5つの「学びの原則」になぞらえて、ケース紹介やワーク、講義を実施。中原先生直伝の「導管モデル突破法」を学ぶ。