企業事例3 パナソニック エコソリューションズ創研 退職OBの活用で連結企業・サプライヤーの製造力を強化
ものづくりの高度化やグローバル化が進み、企業の存続は、連結企業、サプライチェーンなどを含めた改革・効率化が不可欠になっている。そんな中で、連結企業・サプライヤーの経営体質強化と人材育成に力を入れているのが、パナソニック エコソリューションズ創研。ものづくり人材の育成こそ重要な課題という同社にその狙いと仕組みを伺った。
OBの専門人材を活用してサプライヤーの支援と人材育成
パナソニック エコソリューションズ創研のスタートは1992 年。当時、松下電工内にあった生産技術研究所を母体として設立された松下電工技研がそのルーツである。同社代表取締役の加藤憲男氏は、次のように語る。「もともと松下電工には、人材育成を専門に担当する部門があり、社内の人材育成はそこで行われていました。しかし、経営環境の変化とともに、経営体質の強化や高度な製品づくりには社内だけでなく、サプライヤーを含めたよりグローバルな体質強化や人材育成が必要になってきました。そこで、ものづくりのプロ集団である生産技術研究所に、社外の人材を育成する部門をつくり、後にそれを分社化して、設立されたのが当社です」
同社が担当する業務は、大きく2つ。ものづくり支援と営業支援(販売力強化支援)である。それぞれ、研修、審査・診断、コンサルティングと新規事業である研修コンテンツ開発事業の4事業が行われている。これら全てのプログラムが、同社の連結企業やサプライヤーにオープンにされ、提供されている。
発足以来20 年が経ち、同社が対象とする事業所、社員数は増加。その人材育成はいわば、本体の屋台骨をしっかりと支えるための土台づくりともいえる。その意味で、同社がパナソニック㈱エコソリューションズ社グループに経営革新・人材育成の面で果たしてきた役割は小さくない。
その同社の特徴は、社員約100 名の他に、生産技術・管理技術・改善などに関する高度な専門家のコンサルタント、インストラクター、180 名を擁していること。そのうち140 名ほどは、同社のOB。
もともとスタッフは生産技術研究所の専門家として、松下電工のものづくりをつくり上げてきた人たちだけに、ものづくりに対する思いやノウハウはDNA化している。同社が蓄積してきた技術やノウハウを伝承するためには、願ってもない効果的な環境といえる。
同社が提供する研修は、多岐にわたる。たとえば、ものづくり支援「技術製造編」の集合研修では、階層別に「商品技術・生産技術」「製造スキル・工程管理」「営業・購買・生産管理」「品質管理」「ISO・安全衛生・環境」「グローバル」「電気関連公的資格」「住宅建築関連公的資格」の8分野で130近くのプログラムが用意されている。その多様さは60 ページを超える案内用の冊子からもうかがえ、ものづくりの基本から幹部研修まで実践的なテーマが網羅されている。研修案内は、直接、連結企業・協力企業に連絡がいき、東京と大阪にある常設の研修所で研修が行われる。これらの研修が、DNAを伝えていく場となっている。
製造力強化に人材育成めざすは3つのトランジット
集合研修の他に特に力を入れているのがコンサルティングである。専務取締役技術製造推進担当の岡村武司氏は、コンサルティングへの想いをこう話す。「コンサルティングでは、支援企業の改革を進め、ものづくり力を強化することをめざしています。それに加えて、私たちの狙いはもう1つあります。人材育成です。コンサルティングで成果が出て良かった、で終わらせたくないのです。支援する企業のスタッフに改革のプロセスを一緒に体験してもらうことでノウハウをトランスファー(伝承)することができます。つまり、コンサルティング活動を通じたOJTで人材を育成することをめざしているのです」