企業事例2 石川サンケン 通信教育にプラスアルファの工夫で「全社員が中核人材」をめざす
各種エレクトロニクス製品に使われる半導体を生産する
アセンブリーメーカー、石川サンケン。
同社では工場全体の生産レベルを向上することをめざし、
社内での等級認定制度と通信教育を活用しているが、
そこにはただ通信教育受講を促すだけではない、独自の工夫があった。
少数のプロを育てるより社員の意識の底上げ
石川サンケンは、電源周辺の半導体を生産するサンケン電気グループの中核企業だ。人材育成を担当する総務人事部人事課リーダー、福田靖氏は、同社にとっての「ものづくり中核人材」とはどんな人材かについて、以下の3つの能力を備えた人材、と語る。
①設備を操作して高品質なものづくりを行える能力
②設備を良い状態で使用できるように整備保全できる能力
③改善などのマネジメントができる能力
一言で、ものづくりの中核人材といっても、企業や工場かによって求められる能力は大きく異なる。電気製品や装置の電源部に使用されるパワーICなどの半導体を手掛ける同社の場合、設備はほぼ自動化されているために、出来高や品質は設備の稼働率に依存する。したがって、スキルとして設備を安定稼働させる設備保全の技術は極めて重要になっているのである。「弊社はTPM優秀賞(1995 年)や継続賞(1998 年)を受賞するなど、以前から設備保全教育は徹底して行ってきたのですが、その後も2008 年度には独自に『保全マイスター制度』などを導入。人材育成優良企業として県知事表彰などもいただけるようになりました」
しかし、保全技術が向上するにしたがい、新たな課題が生まれてきた。製品が高度化し、さらに高品質が求められるようになるにつれて、同社としても、ワンクラス上の高い品質を保証することが求められるようになってきたのである。
そこで、品質管理のプロを育成しようとさまざまな施策を導入してみたが、一部のプロは生まれても、品質は思うように改善しなかった。
検討を重ねた結果、「少数の専門家の育成より、長期的な視点で社員の意識を底上げする」(福田氏)ことに行き着いたという。
通信教育とテスト、レポートをプログラムに
社員の意識を底上げするために、採用されたのは、社内での等級認定制度と、それにひもづいた通信教育だ。2005年頃からは等級合格が昇格要件に組み込まれ、徹底されている。「品質は、一部のプロが保証するものではなく工場全体で保証するもの。しかも意識を変えてもらうためには、品質だけでなく工場マネジメントのマインドを持ってもらうことが重要です。そこで、そういった考えがもとになっている、ある通信教育を採用することにしました」