Opinion 2 ダイバーシティを理解したうえで 働きがいを丁寧に捉えて4つのバランスで高めていく
働きがいを高めるためには「ほめればいいんだ」「重要な仕事を任せればいいんだ」と単純に理解していないだろうか? 中土井氏は、働きがいを高めるのは、4つの“認知”だという。この4つをバランスよく高められるような対話を上司と部下が丁寧にしていくことでたとえ同じ仕事内容でも、働きがいが向上するのだ。
――社員の能力を高め、業績を上げるには、“働きがい”が大切だと考える企業が増えていますが、現実にはなかなかうまくいっていません。
中土井
その原因の1つは、働きがいやモチベーションの捉え方が、丁寧さに欠けることではないかと思います。たとえば、「ほめればいいんでしょ?」「報酬や表彰制度を用意すればいいんでしょ?」とおっしゃる管理職の方がいらっしゃいます。ですが、これでは少し乱暴なんですね。では、どう捉えればいいか?
そのカギを握るのが、トーマス&ベルトハウスがエンパワメントに関する論文の中で提唱した“タスク・アセスメント”という概念です。
――それは、どんな概念なんですか?
中土井
働きがいを感じるには、与えられた業務の内容そのものよりも、本人がそれをどう“認知”しているかが重要だという考え方です。たとえば、レストランを思い浮かべてください。同じ店員でも、イキイキと働いてる人もいれば、やらされ感が漂っている人もいますよね?
――います、います(笑)。
中土井
つまり人間というのは、仕事の内容そのものではなく、その仕事をどう捉えるか、という認知によって、やる気が出たり出なかったりする。それがタスク・アセスメントの主張です。タスク・アセスメントは4項目に分類されているので、1つずつ見ていきましょう(図表1)。
まず「自己効力感」。これは“自分に課されたタスクを上手にこなせる”いう自信のことです。業務を命じられて「できる」と感じれば自己効力感が高いということですし、「できない」と感じているなら、自己効力感が低い状態といえます。
2つめの「影響感」は、行動の結果がもたらすであろう効果や報酬に対する認識。“その仕事をやり遂げて結果を出したところで、何かしらの違いをつくると思えない”という場合、影響感が低いといいます。