巻頭インタビュー 私の人材教育論 強い組織の足腰とは 国際標準の仕事の仕方と 考えに考え抜く力
国内を中心に資源開発を手がけてきた石油資源開発は、事業構造の変革による埋蔵量のさらなる拡大を図るため事業の海外シフトを始めた。海外での資源開発を成功させるためには、スピーディーで足腰の強い組織が必要と語る渡辺修社長に、その組織づくりと人材育成の取り組みを聞いた。
異なる仕事の仕方を経験を通じて学ばせる
――御社は、2012年の中期経営計画で、海外事業のウエイトをこれまでの3割から6割に拡大すると発表しました。海外シフトをスムーズに行うための施策を教えてください。
渡辺
我が社は、昭和30年に国のエネルギー政策に基づき、国内の原油や天然ガスを開発する目的で設立されました。これまで、秋田、新潟、北海道において、探鉱、開発、生産、輸送、販売に取り組んできましたが、国内の資源は、いずれ減少に向かいます。そこで、埋蔵量に余裕があるうちに海外にプロフィットセンターをつくっていく必要があり、海外事業の割合を拡大しようと決めたわけです。
海外で事業を行うには、国際的な競争力が重要になります。そのために現在取り組んでいるのが、経営体質の強化です。まずその1つは、技術者の戦力化。グループ会社を含む当社の従業員は1800人ほどですが、その多くは技術者です。彼らは、技術分野ごとの高い専門性を持っており、また、ローテーションで現場を体験しているため、現場感覚にも優れています。その専門知識と経験は、諸外国のトップレベルの技術者と比べても遜色がなく、海外メジャー企業の幹部からも、高く評価されています。しかし、これまで携わってきたのは、国内の事業が中心でしたから、仕事の進め方は日本流です。日本というのは、非常にホモジニアス(同質)な国で、下請け企業やエンジニアリング会社に対しても「これをいつまでにやっておいてくれ」というだけで、細かい指示やチェックをしなくても、期日までに期待通りのものがちゃんと出来上がってきます。
しかし、海外では、そういうわけにはいきません。国籍も違えば、人種も考え方も違う人たちと一緒に仕事をするには、相手に通じるロジックでしっかりと説明しなければなりません。さらに、発注と同時に、スムーズに仕事が運んでいるかをチェックする作業も必要になります。我が社は、インドネシア、カナダ、イラク等で海外プロジェクトを手がけ、50余の人を派遣し、海外事業を通じて日本と異なる仕事の仕方を経験しています。つい最近も、イラクで原油の生産が近づき、現場の生産・操業要員をさらに増員することとなりました。しかし、これがなかなか大変なのです。
――とおっしゃいますと?
渡辺
生産要員となると鉱業所の現場からの派遣となるのですが、「国内の事業で手一杯で、海外にまで出す余裕はない」と、出て来ないんです。そこで思い切って社内公募したところ、30人ほどが手を挙げ、その中から5人を派遣し、さらに近々これを倍増することにしました。
ちなみに、選ばれた5人に、「日本よりも生活環境も治安も悪いところになぜ自ら選んで行こうと決めたのか」と聞いてみたところ、「今までと違う経験をすることで、新しいものが会得でき、それを日本に持ち帰れるのではないかと思った」と答えてくれた人がいました。実は、これこそが私が狙っていたことなのです。
日本流の仕事しか知らなかった人たちが、海外の現場で国際標準の仕事の仕方を身につけて日本の現場に戻れば、それまで最善だと思っていた日本の仕事の進め方にも疑問を持つようになるはずです。もっと効率的にできないか、もっとコストを削減できないかと、あらゆる角度から既存の仕事を見直す習慣がつけば、より生産性の高い仕事ができるようになるのです。