ここから始める!ポジティブメンタルヘルス 第2回 人事がつくれる仕組み: メンタルヘルス対策から健康いきいき職場づくりへ
依然として悩ましい職場のメンタルヘルス問題。“未然防止”が重要になる今、人事部門がどう考え方を見直し、動けばいいかを、すぐ使える具体的なツールも含めて紹介する連載です。
1.職場のメンタルヘルスに関する新しい3つの流れ
第1回でご紹介したように、職場のメンタルヘルスに関しては未然防止に関心が高まってきています。特にこの中で、新しい3つの流れがあることも第1回で述べましたが、重要なことなので再度、触れておきます。1つめは、“ポジティブアプローチ”。うつ病の予防やストレスの改善だけでなく、従業員のポジティブな心の健康を増進することも、職場のメンタルヘルスの目標にしようという考え方です。2つめは、“職場の資源へのアプローチ”――職場組織に注目したアプローチです。今日の職場では、職場でのコミュニケーションの低下、信頼および助け合いの低下などが見られます。こうした職場の社会的機能の低下はメンタルヘルス不調の増加や従業員のやる気や活力の低下を招いています。職場組織の機能をメンタルヘルスの「資源」として捉え、向上させることで、メンタルヘルスを改善しようという考え方です。3つめは“経営としてのアプローチ”。こうしたメンタルヘルス対策を進めようとすると、どうしても経営の視点から取り組む必要が出てきます。従業員のポジティブなメンタルヘルスの向上は、企業の生産性向上にもつながります。健康管理部門だけでなく、むしろ人事労務部門が主体となり、経営課題として取り組むことが求められてきます。こうした活動は、「健康いきいき職場づくり」と呼ばれています。第2回の本稿では、このような視点から人事労務部門が、職場のメンタルヘルスのためにどんな活動ができるのかを考えてみましょう。
2.メンタルヘルスから「健康いきいき職場づくり」へ
2000年に国から公表された「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」以来、十数年が経過し、この間に、企業や労働者を取り巻く環境は大きく変わってきました。職場のメンタルヘルスにおいても新しい目標や枠組みを求める声が高まってきました。平成21~23年度厚生労働科学研究費労働安全総合研究事業「労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究」(主任研究者川上憲人)では、これからの職場のメンタルヘルスのあり方について検討しています※1。この中で、ステークホルダー会議が定期的に開催されました。ステークホルダー会議とは、職場のメンタルへルスにかかわるさまざまな関係者(ステークホルダー)、すなわち経営団体代表、労働組合代表、産業保健スタッフ(産業医、産業看護職、臨床心理士、衛生管理者)、産業保健の教育研究機関の代表などが集まり、意見交換や討議を行う場のことです。欧州のストレス対策の枠組みを提案した「職場における社会心理的リスクマネジメントの欧州枠組み(PRIMA-EF)プロジェクト」でも採用された方法です。