人材教育最前線 プロフェッショナル編 “気づき”から始まり、 学びと実行により成果が生まれる
Change(変革)、Challenge(挑戦)Create(創造)を企業姿勢に掲げるノーリツ。社員の果敢な挑戦を受容する社風はイコール、社員自身に強い主体性と自立心を求めていることを意味する。そして、その主体的行動は日々の業務だけでなく、社員自身が成長するための学びの場でも重視されている。教育の現場において、多くの社員の“気づいたこと”を“できること”へと転化してきた人材開発グループ リーダーの林 哲也 氏。だが、研修の真の意義を問い直す中で、“気づき、学び、実行”を誰よりも実践してきたのは林氏自身であった。
12年間の営業職から感じた研修の意義
人事部の林哲也氏がノーリツに入社したのは1991年の7月。新卒の同期から3カ月遅れての入社だった。実は、林氏が大学卒業後に入社したのはノーリツではなく、別の企業。だが、本来望んでいた会社ではなかったために、入社1カ月で辞めてしまったという。「再び就職活動に戻ったものの、キャリア1カ月では相手にしてもらえません。ノーリツはそんな中で面接をしてくれた数少ない会社の1つでした。1日も早く社会人になって、社会に貢献しなければという焦りもありましたが、面接で、自分がいるべき場所に巡り合えたような、“縁”を感じたのです」入社後、東京支社の営業部に配属。そのまま12年間、籍を置いた。「振り返れば、今の自分を形づくる貴重な体験も多かった」と語る。林氏は当時の課長の担当店を引き継ぐために、配属直後から課長と行動を共にすることが多かった。「課長は小売店を訪問し、商品の提案をするだけでなく、小売店の営業担当者を集めてノーリツの製品についてよく研修を行っていました。私も毎回同行し、時には講師を務めることもありました」さらに経験を重ねると、今度は内勤の女性社員を対象とした研修を手掛けるようになった。「内勤の社員は実際の商材に触れる機会が少ないのですが、商品に関する問い合わせに答えなくてなりません。そこで、研修を開くようになりました」研修はあくまで業務の1つであり、楽しさより、「やらなければ」という気持ちが強かったという林氏。しかし、人が成長し、成果を上げるために研修が果たす役割や意義は、当時も強く感じていたという。
組合活動から得た組織を変えていくやりがい
営業一筋だった林氏に最初の転機をもたらしたのが、労働組合での活動だった。営業部に所属する傍ら、労働組合の役員を8年間歴任した。「組合活動をしていると、徐々に会社全体の動きや、人と人とのつながりが見えるようになり、経営側が何を考えているのかがわかるようになりました。組合活動に参加する以前と比べ、何をどうすべきなのか、自分の考えをより深められるようになり、視野が格段に広がりました」たとえば、営業担当者の社外での連絡手段として携帯電話が普及し始めた頃のこと。各部署に2~3台ずつ携帯電話が支給されたものの共用物だったため、個人で携帯電話を購入し、自腹で料金を払う社員も多く、全社的なルールがきちんと決まっていないことが問題となった。林氏は組合役員としてこの課題に取り組み、ルールを整備するために力を尽くした。そしてこれが、営業という限られた視点から脱し、全社を見渡す広い視野を持つ契機となった。「営業担当者として仕事をしていると、自分と自分の顧客のWin-Winをベースにどうしたら良いかを考えます。もちろんこれも大事なことですが、携帯電話のルールづくりは、七百数十名いるノーリツの営業社員、さらには全社に対して影響を及ぼすことです。自分の力で組織をより良く変えることができる。それは厳しくもあり、楽しくもあり、やりがいがありました」